現地ルポ 南海電鉄(南海辰村建設)の大欠陥マンション(滋賀・大津京) 「これはヒドい!」

現場所長にウラ金。あまりの悪徳工事で泥沼訴訟
現地ルポ 南海電鉄(南海辰村建設)の大欠陥マンション(滋賀・大津京) 「これはヒドい!」 画像1
JR大津京駅の目の前に位置する大津京ステーションプレイス。高層階からは琵琶湖が一望できるが……
Photo:加藤 慶
「上から下までメチャクチャです。基礎部分のヒビ割れで、地下の立体駐車場はご覧の通りの水没状態。車が置けないばかりか、夏はボウフラが大量発生して、衛生などあったものではない。南海グループのゼネコンだから信用していましたが、巨大な落下物で周りに被害も出ており、杜撰(ずさん)を通り越して殺人的です」
 関西の私鉄大手『南海電鉄』の子会社『南海辰村建設』(大阪市浪速区・東証二部)が施工したマンションに、深刻な欠陥が浮かび上がっている。京都駅から電車で約20分、JR大津京駅の駅前にそびえる14階建てのマンション『大津京ステーションプレイス』(全108戸・販売価格2500万円台〜3900万円台)だ。
 南海辰村と建設工事の請負契約を交わし、同マンションを販売した不動産デベロッパー『大覚(だいかく)』(滋賀県大津市)の山下覚史会長は、憤りを隠さない。
「そもそもの始まりは’08年のことです。ウチが持っていた土地にマンション建設計画が持ち上がり、南海さんと19億5300万円の建設請負契約を結びました。しかし’09年11月に予定していた引き渡し前の検査で、エントランスホールの天井の仕上げなどが我々が要求するものと違っていたことがわかったんです。ほかにも、壁紙の剥(は)がれなど補修しなければいけないところがたくさんあったので、現場所長K氏を本社の会議室に呼んで『きちんと直して下さい』と申し入れましたが、頬杖(ほおづえ)をついたり、ふんぞり返ったり尊大な態度で、ちっとも聞く耳を持たない。今後の対策に頭を悩ませていた矢先、『残代金の15億8145万円を支払え』と裁判を起こしてきたんです」
 これに対し大覚は、南海辰村や親会社の南海電鉄などを建物の瑕疵(かし)を理由に反訴。ドロ沼の訴訟合戦に突入した。
「外部の検査機関にマンション全体を検査してもらった結果、屋上の床にコンクリートが250tも増し打ちされていることがわかったんです。図面にはまったく描かれていない過積載で、『建築基準法』で定める保有水平耐力に足りないのです。韓国沈没船のように、頭でっかちになっているんです。これでは巨大地震が来たとき、住民の生命を脅(おびや)かすことになるので、すでに引き渡して入居していた58戸の方々に希望を聞き、そのうちの29戸に対しては販売価格で買い戻しをしました」(山下氏)
 ほかにも欠陥は次々に発覚した。
●屋上のアスファルト防水が杜撰で、14階の天井から雨漏りし、室内は床一面が水浸し状態で、大量のカビが発生
●地下の貯水槽へ雨水を流すパイプが、無意味に高い位置に付いているため、排水が滝のように流れ落ち、反響が騒音となって3階まで伝わる
●設計図には描かれている側溝がないため、大雨が降ると敷地が水浸しになる
●配水管が高圧の電気室内を通り、万一漏水した場合、ショートする危険がある(隣は子供が遊ぶキッズルーム)
●基礎コンクリートに、工事で使った木片が"化石"のように埋まっている
 現場を取材した記者は、建築の素人が遊びで行ったようなひどい工事に、開いた口が塞(ふさ)がらなかった。
現地ルポ 南海電鉄(南海辰村建設)の大欠陥マンション(滋賀・大津京) 「これはヒドい!」 画像2
地下駐車場には地下水が溜まっており、とても駐車はできない。ポンプでくみ上げて排水するしかない
Photo:加藤 慶
現地ルポ 南海電鉄(南海辰村建設)の大欠陥マンション(滋賀・大津京) 「これはヒドい!」 画像3
配水管と変電設備が近接しているため漏水した場合ショートする恐れがある。目を疑う設計だ
Photo:加藤 慶
400万円の架空請求
 これら数々の欠陥にもかかわらず、昨年2月に出された大阪地裁の一審判決は、屋上の増し打ちされたコンクリートは〈直ちに瑕疵に当たるといえるか否かは明らかでない〉として大覚の主張を退け、基礎梁(きそはり)の漏水や地下の排水の不備、電気室内の排水管設置など、ほかの欠陥の多くを〈瑕疵〉と認めつつも、その補修に要する費用など7699万円を残代金から差し引いた15億445万円、および遅延損害金を支払えと大覚に命じた。施工業者と販売業者の建築訴訟の場合、瑕疵が重大であっても、建てた業者に軍配が上がるケースは多い。大覚は即刻控訴したが、昨年9月、あわや大惨事の事故が起きる。山下氏が言う。
「台風18号の影響で、地上40mの高さにある14階の廊下に設置されていた防風スクリーン4枚(120㎝×120㎝)が落下、隣のマンションの受水槽などを壊して、断水させたんです。そのうちの1枚は60m先のレストランの壁を直撃しました。剥がれ落ちた防風ガラスの底部は、わずか2㎝ほどのアンカーで固定されていただけでした。大津京駅を走る電車や、線路に落ちていた可能性もあった」
 南海辰村の闇はさらに深い。あろうことか、前出の同マンションの現場所長・K氏が、建設工事の過程で生コン会社に400万円の架空請求をさせ、その約半額を自分の個人口座に入金させていた疑惑が発覚したのだ。その現場所長とは、引き渡し前の大覚の訴えを、頬杖をつき、ふんぞり返って聞き流した人物である。
 山下氏は「南海は腐っている」と憤る。
「あまりにもウチをバカにしているではないですか。コストダウンのため、バレないと思って手抜き工事をしながら、一方では生コン業者に400万円もの架空の伝票を切らせて、その金額を建設費用に入れてくるんですから……。現場所長のKは、その約半分を自分の個人口座にバックさせていました。その生コン会社の社長が不正を認め、振込金受取書を提供してくれたから明るみに出たんです」
 日本建築検査研究所の岩山健一代表が言う。
「今回のようなケースは氷山の一角です。ゼネコンは下請けとウラ金を作って、甘い汁を貪(むさぼ)っています。ウラ金を通じて共犯関係になった下請けが違法な工事をしても、ゼネコンは強く注意できません。すると、下請けが作った欠陥をゼネコンが隠蔽(いんぺい)する構図ができあがる。そして購入者は、割高な価格で欠陥マンションをつかまされることになるのです」
 5月13日、岸和田市内にある自宅前で、南海辰村の猪﨑光一代表取締役社長を直撃すると、「会社に来てもらえますか」とのことだった。同日、大阪市内の本社を訪れると、猪﨑社長ではなく、同社の経営管理本部の担当者が「詳細は係争中のため、応じかねます」と断りつつ取材に応じた。
――なぜ、訴訟合戦になったのか。
「当社は、『もちろん手直しはするが、代金のお支払いもお願いします』というスタンスでした。しかし、話し合いでは決着がつかず、支払いの確証が得られなかったので、訴訟に至ったのです」
――地下の立体駐車場の水没や、屋上のコンクリートの過積載については、瑕疵と認識していますか?
「当社は瑕疵とは認識していません。一審の判決でも、それは認められています」
――昨年、防風スクリーンが落下しました。一般的に考えて、防風スクリーンが落ちることはあり得ないのでは?
「(困惑の表情を浮かべ)……う〜ん。ちょっとそこは差し控えたい」
――生コン会社と現場所長による、工事代金の架空請求があったのか?
「そういう問題があることは認識しています。仮に事実だったとすれば、社内規則に則(のっと)り、厳正に対応したいと考えております。現状は調査中です」
 南海辰村は、南海鉄道や大阪市営地下鉄などの鉄道工事も幅広く行っている。人命を預かる資格はあるのだろうか。
現地ルポ 南海電鉄(南海辰村建設)の大欠陥マンション(滋賀・大津京) 「これはヒドい!」 画像4
台風の影響で廊下の共用部分から落下した防風スクリーン。ガラスは蜘蛛の巣のようにひび割れ、衝撃の大きさを物語る
Photo:加藤 慶
現地ルポ 南海電鉄(南海辰村建設)の大欠陥マンション(滋賀・大津京) 「これはヒドい!」 画像5
屋上からの眺め。目の前にはJR湖西線の線路がある。もし防風スクリーンが通勤ラッシュの線路に落ちていたら……
Photo:栗原資英
現地ルポ 南海電鉄(南海辰村建設)の大欠陥マンション(滋賀・大津京) 「これはヒドい!」 画像6
本誌の直撃取材に対し、「ここは自宅前なので、本社で取材に応じます」と応じた猪﨑代表取締役社長
Photo:加藤 慶
現地ルポ 南海電鉄(南海辰村建設)の大欠陥マンション(滋賀・大津京) 「これはヒドい!」 画像7
生コン会社の社長が明かした架空請求の内容。現場所長のK氏は焼き肉代をせびることもあったという
現地ルポ 南海電鉄(南海辰村建設)の大欠陥マンション(滋賀・大津京) 「これはヒドい!」 画像8
南海辰村の現場所長の個人口座に、生コン会社社長が150万円を振り込んだときの「振込金受取書」
現地ルポ 南海電鉄(南海辰村建設)の大欠陥マンション(滋賀・大津京) 「これはヒドい!」 画像9
大阪市浪速区にある南海辰村建設株式会社が入るビル。同社の6割の株を南海電鉄が所有している
Photo:加藤 慶
あなたにオススメ

FRIDAY GOLD

6月23日発売
friday gold