司法は生きていた!英断! 大飯原発再稼働を差し止めた3人の裁判官

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判決文は計15枚。「本件原発に係る安全技術及び設備は、(中略)脆弱なものと認めざるを得ない」との文言も
「原子力発電所の稼働は法的には電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由に属するものであって、憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべきものである」
 5月21日、福井地裁は福井県などの住民が起こした差し止め訴訟に対して、「大飯(おおい)発電所3号機及び4号機の原子炉を運転してはならない」(判決主文)とする判決を下した。冒頭は判決の「理由」の一節。発電という「経済活動」と「個人の生命、身体、精神及び生活に関する利益」の総体である「人格権」を比べたら、憲法で保障されている「人格権」のほうが優先度が高い。大飯原発は地震対策に「構造的欠陥」があると指摘し、人格権を脅かす恐れがあると断じた。再稼働に向かおうとしている日本の原子力行政に冷水を浴びせた、画期的な判決だ。
 英断を下したのは、福井地裁の樋口英明裁判長、石田明彦裁判官、三宅由子裁判官である。全国紙司法記者が言う。
「裁判長の樋口氏は、福岡地裁を振り出しに和歌山、大阪、熊本など各地の地裁や支部で勤務してきた民事のベテランです。福井地裁への着任は’12年4月。昨年の福井県議会会派の政務調査費をめぐる住民訴訟では、住民側勝訴の判決を出していますし、’13年の労災に関する裁判では、労働基準監督署が労災が原因の自殺と認めなかった事案を、労災によって引き起こされた精神障害が自殺の原因だと認め、国に『労災不認定の処分取り消し』を命じています。市民感覚に寄り添った裁判長という印象です。今回の大飯の運転差し止め裁判でも、訴訟引き延ばしを狙って主張を小出しにしたり、裁判所からの質問に答えようとしない関西電力を『なぜ資料が出せないのですか』などと問い詰めて審理を迅速化する、異例ともいうべき訴訟指揮をとっていました」
 前述の労災判決で、原告の代理人を務めた坪田康男弁護士が語る。
「気骨と信念のある方だと存じます。感情で物事を判断するのではなく、法律に従って間違ったことは間違い、正しいことは正しいと判断を下される印象です。ムダなことは言わず、必要最低限のことしか発言しません」
『絶望の裁判所』(講談社刊)の著者で、裁判官として東京地裁、最高裁などで勤務した瀬木比呂志氏(明治大学法科大学院専任教授)は、今回の判決に至った経緯を次のように推察する。
「原発反対で訴えた裁判で住民側が勝ったのはわずか2件。’03年の『もんじゅ』訴訟と、’06年の『志賀原発』訴訟だけです。しかもいずれも上級審で敗訴が確定している。もんじゅの場合は、最高裁が原判決を破棄して『動かしていい』と認めた直後に事故を起こして止まり、世論の大きな批判を受けている。日本の裁判官は世論に敏感だから、今回の判決は原発行政への国民の不満をすくい取った面もあるでしょう。また、実際には最高裁が背後で関与していると思われる、’12年1月に司法研修所で行われた原発訴訟に関する研究会で、『原発の運転差し止めに対する司法判断を緩めてもよい』という旨の示唆(しさ)が出された可能性も高いです」
 この研究会で、最高裁は全国各地の裁判官を集め、原発訴訟の問題点や対応策を議論している。中身は非公開だが、「3.11を踏まえて従来の判断の枠組みを再検討する必要があるという議論も行われたようだ」(前出・全国紙司法記者)という。
 樋口裁判長が研究会に参加したかどうかは不明だ。ただ、こうした司法界の気運も、今回の判決に何らかの影響を及ぼした可能性はある。
「樋口裁判長は、今回の大飯原発運転差し止め判決以外にも、過去に『正義』を実践するような判決を出しています。その意味では一貫しています。日本では、多くの裁判官が判例と出世にとらわれて、国民ではなく権力を守る〝国策裁判官〟のようになっているけれど、なかには自分の頭で考え、自分の良心に従って判断できる裁判官もいるということです。その数は、とても少ないですが」(前出・瀬木氏)
 ベテランの樋口裁判長とともに今回の判決を出した石田氏は、’03年に大阪地裁の判事補に任官、もう一人の三宅氏は今年1月に福井地裁の判事補に任官したばかりの若手だ。彼らの下した判決が、今後、高裁でどう裁かれていくのか。
 国民は注意深く見守っていかなければならない。
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