福島原発 また放射能飛散を隠した東電と農水省

ガレキ粉塵とともに4時間で
4兆ベクレルの放射性物質が飛んでいた
福島原発 また放射能飛散を隠した東電と農水省 画像1
'12年夏まで田んぼだった場所で草刈りをする江井氏。「原発事故以降、住民は被曝するのをおそれ、30分以上外出する人はほとんどいなくなってしまった」と嘆く
「ここは以前、おいしいコメが作れる場所だったんです。それがダメになってしまった。本当に悔しい。この怒りを誰にぶつければいいんですか。国も東京電力も、大事なことをなんで隠すんだ。文句を言いたいが手段がない。私たちは国のモルモットですか」
 怒りをあらわにするのは、福島県南相馬市で農業を営む江井新英氏(70)だ。
 江井氏が住むのは、福島第一原発から20㎞以上離れた同市中太田地区。そこに大量の放射性セシウムが降りそそいだのは、昨年8月のことだ。同市内の19ヵ所で収穫されたコメからは、国が定める出荷基準値の1㎏あたり100ベクレルを超えるセシウムが検出された。
「2年前できたコメを計ると30ベクレルだったので『もう大丈夫だ』と安心していたんです。それが昨秋収穫されたものからは、180ベクレルも出た。『なんでこんなに高いんだ』と疑問に思いましたが、国や東電から原因についてなんの説明もありませんでした」(江井氏)
 農林水産省と東電は情報を隠していた。
 昨年8月19日、福島第一原発では、3号機のガレキ撤去作業が行われた。その際、散水やシートで覆うなどの対策を怠ったため、大量の放射性物質が飛散し、周囲の田んぼのコメにも放射性物質がついた可能性があると、農水省は判断。今年3月に東電に対して、放射性物質を外部に出すなと内々に要請していたのだ。
 4月になって東電は「4時間の撤去作業で最大4兆ベクレルの放射性セシウムが放出されていた」との試算結果を農水省に報告した。だが両者は、この4兆ベクレルという恐ろしい数字を地元自治体や国民に伝えなかった。
 そして7月14日に朝日新聞がこのことを報じて、ようやく放射性物質が大量にバラまかれた事実を認めたのだ。
 前出の江井氏が続ける。
「原発事故前は、コメを作ると1反あたり8万〜9万円の収入がありました。でも東電は5万7000円の補償しか出しません。これではとても足りない。家も田んぼも除染はされていません。土の汚染値が1500ベクレル以上というのは当たり前。それでも福島の農家は、コメや野菜を作らなければ生きていけない。いったい、どうしたらいいんでしょうか」
 農水省と東電に、なぜ放射性物質飛散の事実を隠蔽(いんぺい)したのかを質(ただ)した。
「ガレキ撤去がコメの汚染の原因かは不明でした。南相馬市には要因を特定し、今後調査を行うと説明しています。東電に対しては、飛散防止対策の徹底を依頼しています」(農水省穀物課)
「ガレキ撤去作業で放射性物質が飛散した可能性は否定できません。ただ汚染との因果関係がわからなかったので、公表は考えませんでした」(東電広報部)
 この体たらくに、南相馬市長の桜井勝延氏が憤る。
「情報が伝えられなければ、混乱するのは市民です。絶対にやってはいけないこと。実際に汚染米が出たことで、今年の作づけは減ってしまっている。国や東電に厳重に抗議するのはもちろん、二次的損害賠償の請求も検討しています」
 セシウムが検出された南相馬のコメ810㎏は、すべて出荷停止となった――。
取材/桐島 瞬(ジャーナリスト)
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