危険手当「7割ピンハネ」で東電を訴えた原発作業員怒りの告発

福島第一の4人 計6200万円
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S氏は「周囲に(東電が約束する)2万円の手当をもらっていた下請け作業員などいなかった」と語る
「大量被曝(ひばく)をしながら、2年近く1F(福島第一原発)で働きました。もらえた危険手当は日額3000円だけ。会社は7割もピンハネしていたのです。こんな仕打ちは絶対に許せません」
 怒りを露(あらわ)にするのは、’11年5月から’13年2月まで福島第一原発で働いていた作業員S氏(66)だ。9月3日、S氏ら作業員4人は東京電力など17社を相手に、約6200万円の損害賠償を求め福島地裁いわき支部に提訴した。訴状によると危険手当などを中抜きされたという。
「私はゼネコンの鹿島建設を元請けとする、二次下請け企業A社で働いていました。何をやるのかも知らされず1Fへ行き、汚染ガレキの処理や、それを積んだ37tダンプの誘導などをしました。原子炉建屋の前に立っているだけで、1ミリシーベルトの被曝をする現場です」
 S氏の福島第一原発での被曝総量は、47ミリシーベルトにのぼる。危険な作業現場にもかかわらず、それに見合う手当は支給されなかった。一日に受け取ったのは1万2000円の日当の他に、名目不明の3000円だけだ。
 東電が元請けに支払う日額の危険手当は、時期により違うことが明らかになっている。原発事故直後の'11年3月〜4月は10万円。S氏が働いていた時期は2万円だ。東電の廣瀬直己社長は今年4月に国会で「末端の労働者にまで(規定の手当を)行きわたらせる」と約束している。
 当初、S氏は手当が出ることは知っていたが、金額は教えられていなかった。上司に尋ねると口外しないことを前提に、こんな返答があったという。
「『一次下請けのB社には鹿島から満額の2万円が支払われ、半額引いた1万円がウチに渡される』と言われました。つまりA社は7000円をピンハネ。元請けから私の間では、1万7000円も中抜きされていたんです。知り合いには、日当9000円に1000円の手当しかなかった三次下請け社員もいます」
優秀な作業員がいなくなる
 納得のいかないS氏は昨年初め、A社の本社がある東京まで出向き、役員に直談判した。だが役員の反応は誠意の感じられないものだった。
「思っているほど出ないんだよ。われわれとしては精いっぱいのつもりだよ」
 抗議のせいか、翌月から日当と危険手当がそれぞれ1000円ずつ増額された。S氏はもっと増額すべきと主張したが、認められずA社をやめる。
「契約もいいかげんでした。金額や労働時間など空欄だらけの契約書を渡され『ハンコ押して』と言われるだけ。内容について説明を受けることもありません」
 ピンハネを生む多重下請け構造で、泣き寝入りする作業員は多い。S氏はこうした体質を変えようと、提訴に踏み切った。請求額は危険手当などの未払い分1580万円を含む1738万円だ。
 いわき市議の渡辺博之氏は「ピンハネが横行して優秀な作業員が1Fから離れている」と語る。
「素人が多くなり、以前では考えられなかったトラブルが頻発しています。昨年12月に、増設したタンクから汚染水が漏れる事故がありました。原因はズサンな工事です。沖縄から来たばかりの作業員が不安定な土台を作ったため、スキ間から汚染水が漏れたんです。ピンハネ体質を改善しなければ現場の士気は低下し、今後も事故が起きるでしょう。東電は中抜き防止を元請けに任せきりにせず、すべての作業員の給与体系や労働環境を守る義務があります」
 だが今回の提訴に対しても、東電から危機感は伝わってこない。
「訴状が届いていないので詳細は承知していません。請求内容やご主張を詳しくうかがい真摯に対応します。(手当は)作業員の皆様に行き渡るよう元請け各社に今後も要請していきます」(広報部)
 これでは40年以上かかる廃炉作業を安全に進めることなど、とうていできない。

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S氏の通帳。(A)が出入金日で(B)がA社からの振り込み額。抗議した平成25年('13年)以降給料が上がっている。A社は給与明細さえ発行していない

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今回訴訟を起こした別の二次下請け作業員(50代)の給与明細書。支給されたのは9000円ほどの日当と残業代だけ。危険手当は1円も出ていない
取材・文/桐島 瞬(ジャーナリスト)
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