〝動く原発〟 ロナルド・レーガン事故想定 30㎞圏内緊急避難エリアは横浜、東京、千葉!

ついにタブーの
検証作業委員会が発足
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10月に横須賀に配備された原子力空母、ロナルド・レーガン。全長約333m、幅約77m、乗組員は5000人以上だ
 11月6日、東京・霞ケ関の首相官邸裏手に位置する中央合同庁舎8号館。この一室で日本原子力研究開発機構安全研究センター長の本間俊充氏らを中心とした、ある作業委員会が発足した。「原子力艦の原子力災害対策マニュアル検証に係る作業委員会」。〝動く原発〟と呼ばれる、米海軍の原子力空母の事故を想定したマニュアルの検証を課された組織だ。
 今年10月、米海軍横須賀基地に原子力空母、ロナルド・レーガン(R・R)が、ジョージ・ワシントン(G・W)と交代で配備された。R・Rは動力として加圧水型の原子炉2基を搭載しており、熱出力は合計120万kWと推定されている。これは、福島第一原発1号機(138万kW)と同レベルなのだ。元東芝の原子炉格納容器設計者である後藤政志氏が話す。
世界で横須賀だけ
「たしかに原子力空母のような艦船は、原発に比べて地震、津波の影響は少ない。しかし、艦船の原子炉はコンパクトさが求められます。実はこれが原子炉の安全性確保の一番のネックになる。スペースが限られるので、より高濃度の核燃料棒を使用する。そのため、核反応の制御が原発よりも難しいのです。さらに、原発では事故が起きたとき、格納容器で閉じ込めるのですが、当然この格納機能も原子力空母では小さくなります。つまり、事故が発生した際のガードも脆弱(ぜいじゃく)。ひとたび事故が起きれば、原発よりも原子力空母のほうが恐ろしいのです」
 これまで見て見ぬフリをされてきたが、リスクが極めて高い原発がJR横須賀駅から1㎞ちょっとの場所にあるようなものなのだ。日本各地の原発は、曲がりなりにも政府による安全審査を受けている。しかし、原子力空母は軍事機密であることを理由に安全性の評価に必要な情報公開が行われていない。事実上、ノーチェック状態なのだ。横須賀市で原子力空母の配備に反対してきた、呉東(ごとう)正彦弁護士が話す。
「’11年に、当時横須賀を母港としていたG・Wが、四国沖で放射性物質を放出している可能性があることがわかった。この件は、私がアメリカの情報公開法に基づいて請求した、G・Wの航海日誌を分析して明らかになりました。日本政府もチェックできていないのです」
 現在、米海軍は10隻の原子力空母を保有している。しかし、R・R以外の原子力空母の母港は米東海岸のノーフォーク海軍基地(バージニア州)をはじめ、カリフォルニア州やワシントン州などの、米国内でも人口密度が低い地域にある。横須賀のような人口密集地帯の近くに停泊している例は、世界で類を見ないのだ。
 だが、原子力空母の事故を想定した満足な準備はなされていない。’11年の福島第一原発の事故を受けて、原子力規制委員会は「原子力災害対策指針」をまとめ、原発事故の際の避難基準を厳格化した。避難判断基準は、毎時5マイクロシーベルト。避難範囲は「半径5㎞圏内(予防的防護措置準備区域)はただちに避難」「半径30㎞圏内(緊急時防護措置準備区域)の自治体は避難計画を策定」とした。しかし、原子力艦の事故の際の避難基準を定めたマニュアルは依然ユルいままなのだ。避難判断基準は毎時100マイクロシーベルト。「半径1㎞圏内は避難」「半径3㎞圏内は屋内退避」と極めて楽観的だ。11月20日、ようやく検証作業委員会が避難判断基準を原発並みの毎時5マイクロシーベルトへと厳格化しただけだ。
 原発指針と同じように半径30㎞圏内を緊急時防護措置準備区域にした場合、370万人の人口を抱える横浜や、川崎といった人口密集地帯に加え、千葉・木更津や東京・大田区の一部まで含まれる。しかし、これらの自治体による避難計画の策定は現時点では白紙状態だ。前出・呉東氏が話す。
「福島第一原発の事故では、50㎞近く離れた飯舘村やさらに遠くの地域も避難区域になりました。横須賀の原子力空母で事故が起きれば、風向き次第では首都圏一帯が放射能で汚染される可能性もある。実際に防災体制が必要な地域は50㎞圏以上になるでしょう。避難範囲を、原発指針並みにすることは最低限の対策です」
 今後10年近く、R・Rは横須賀を母港にすると見られる。当分の間、動く原発は首都圏のノド元に突き刺さったままになるのだ。
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PHOTO:毎日新聞社/アフロ
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