熊本地震「もう限界です」車中泊・避難所生活の現実

東京・大阪・名古屋で起きたら大パニックになる!

停電は丸4日、車中泊でエコノミークラス症候群続出、感染症の恐怖も。
ガス、水道は一部で復旧のメドが立たず、それなのに空き巣の被害が!
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被災した住宅地の瓦礫の処理はいまだに進んでいない。倒壊寸前の家屋だけでなく、通行不能な道も数多くある
 電気、水道、ガスという都市インフラを失ったとき、生活はどう変わるのか。大震災に見舞われた熊本の現実が、それを教えてくれる――。
「4月15日からずっと家族5人でワゴン車に寝泊まりしています。私が助手席、主人が運転席、幼稚園と小学生の子ども3人が後部座席。子どもたちに楽な姿勢をとらせたいので、私たちはシートをあまり倒すわけにもいきません。もう身体のあちこちが痛いです。4日目には足がパンパンに腫れてしまって靴も履けなくなりましたから……。しかも夜に余震があると子どもたちが目を覚まして泣いてしまうので、落ち着いて寝られないんです。自宅アパートは玄関のドアが開かないし、断水も続いていますから、とても住める状況ではありません。こんな暮らしはそろそろもう限界です……」
 熊本県益城(ましき)町にある巨大展示場、グランメッセ熊本の駐車場で「車中泊」を続ける30代の主婦はそう明かす。
 避難生活は想像以上に苦しい。
 しかも4月の九州であれば、車中泊もまだ可能だが、真冬もしくは真夏の東京のような大都市ならばさらに過酷な事態になる。防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏はこう警鐘を鳴らす。
「第一に東京は熊本と比べても圧倒的に避難所が足りません。さらに車中泊をしようにも駐車スペースが少ない。多くの被災者がホームレス状態になるかもしれません。さらに心配なのがトイレ不足。都内では垂れ流しにするしかない状況もあるでしょう。そうすると夏はノロウイルス、冬はインフルエンザの集団感染も想定できます。身動きがとれない状態で、震災後の大都市では火災発生のリスクも高いうえ、余震も続けば誰でも尋常な精神状態ではいられないでしょう」
 4月14日に発生した熊本地震から2週間あまりが経ったが、前述のグランメッセ熊本ではいまだ1000台の車が止まり、1800人が車中泊を余儀なくされている。県内の停電は20日に復旧したが、益城町や南阿蘇村の大半の地域ではガスや水道は止まったままである。
「益城町の商店で営業しているのはコンビニ、薬局、コインランドリーなどごく少数です。ガソリンスタンドも震災直後は大渋滞を引き起こしました。住宅地の瓦礫はいまだ手付かずというところがほとんどです」(住民の30代男性)
避難所で一番辛いことは
 町内の避難所も決して快適ではないという。避難所で生活する40代主婦が語る。
「仮設トイレの汚さにはウンザリです。それと施設内のトイレはまだ水が流れないのに使用した人がいて、その近くで寝ていた人はしばらくの間、異臭を我慢していました。いまはよくなりましたが、当初は食事の配給が1時間以上並んでおにぎり2つという時もありましたね。いま何より辛いのは寝床の狭さです。畳1畳半のスペースにマットか段ボールを敷いて5人で足を重ねて寝ているんです」
 こうした避難生活が原因で、エコノミークラス症候群にかかる住民が続出している。26日、熊本県はそのなかでも重症と判断された患者が37人(うち1人死亡)にのぼると発表した。
 医療スタッフとして避難所に常駐している特定非営利活動法人「アムダ」の鈴記好博医師はこう説明する。
「避難所生活でも、車中泊同様にエコノミークラス症候群に罹患する危険性があります。それだけではなく、集団生活ではどうしても感染症のリスクがあります。南阿蘇村で発生したノロウイルスの集団感染もその一つ。ノロウイルスは感染力が強いうえ、普段のような手洗いができていないので、広がりやすいんです。また阪神・淡路大震災を経験して、こちらで再度被災したという女性は夜泣きをされています。精神面はストレスの問題も深刻ですが、高齢者の方が風邪をこじらせて肺炎になるケースもあります」
 被災地の住民は治安にも不安を抱えている。熊本県警は23日午前6時までに、窃盗や建造物侵入の被害届を18件受理した。益城町に住む30代男性が証言する。
「最近も住宅地をウロウロしている不審な人物の目撃情報があります。カメラをブラ下げて記者を装っていましたが、家に人気(ひとけ)があるか確認するように崩れかけた家屋の中を窺っていたとか。自宅は倒壊寸前ですが、納屋が無事だったので、夜はそこに泊まって、空き巣を警戒しています。家族には夜9時以降は外出しないように言っていますし、近所の仲間とは見慣れない車や人物がいたら情報を共有しようと話し合っています」
 もし東京、大阪、名古屋のような大都市が今回と同規模の地震に襲われた場合、熊本の状況をもとに想定されるのは、
●避難所の不足による、熱中症、凍傷、エコノミークラス症候群
●感染症の蔓延
●精神面へのダメージ
●空き巣、スリなどの窃盗被害
 などだ。もっとも重要なインフラの復旧について、東京電力、関西電力、東京ガス、水道局などは「必要な震災対策を講じている」と口を揃えるが、筑波大学大学院教授の糸井川栄一氏(都市防災計画)はこう言う。
「たとえば東京都では1週間から、場合によっては1ヵ月ほど上水道が使えないことを覚悟しないといけない。電力は行きわたるまでに6〜7日、ガスは全面復旧までに2〜3ヵ月かかるでしょう。そもそも避難所となる学校の体育館では冷房設備はほとんどない」
 関東大震災からまもなく100年。いつか必ず「そのとき」は来る。東京・大阪などの大都市で起こる極限の事態に、あなたは耐えられるか。
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益城町総合体育館の駐車場にも「車中泊」用の自家用車が並んでいる
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避難所ではラーメンなどの人気メニューの炊き出しに大行列ができていた
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益城町の小学校の跡地が災害ごみの仮置き場となっている。スペース不足や処理の遅延が懸念される
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4月23日、安倍晋三首相が熊本入り。自衛隊のヘリを使って南阿蘇村や益城町の避難所などを半日で視察した
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ブルーシートをクルマにかけて目隠しをし、物置きとして使用
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車のトランクには生活用品がぎっしり詰まっていた
PHOTO:豊嶋孝仁
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