バンデンハーク(ソフトバンクホークス)「いまだ発展途上です」

〝野球小国〟オランダ出身で元捕手と異色の助っ人が連勝プロ野球記録樹立
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海も山もある福岡はリラックスできてお気に入りだという。「1年目に見たサクラの美しさは忘れられない」
「野球は勝負の世界。けど自分は勝ち負けという概念にはとらわれない。どうすればもっといい投手になれるのか。毎日それだけを考えて過ごしています。過去も振り返らない。常に前だけを向く。それが記録につながったと思っています」
 昨年6月の来日初登板から無傷の14連勝。堀内恒夫氏が巨人時代の’66年に作った記録を50年ぶりに破ったソフトバンクの助っ人右腕、バンデンハーク(30)は、あくまで謙虚だった。
 最大の武器は198㎝の長身から投げ下ろす最速157㎞の剛速球だが、手足の長い外国人投手にしては珍しく、コントロールがいいのも特徴だ。
 ただ、パ・リーグには同タイプで、もっと速い球を投げる大谷翔平(21・日本ハム)がいる。だが、楽天・今江敏晃(32)は「バンデンのほうがイヤ」と即答。同僚の銀次(28)によれば、その理由はこうだ。
「データにあるクセや、配球のパターンが次の対戦時には修正されている。研究熱心なのに加えて、人のアドバイスに素直に耳を傾けるそうです。もともと捕手をやっていただけあって、打者心理を読むのも上手い。バンデンハークを攻略するには、彼の倍、データを集めて、逆をついていかないといけないと思います」
 若きエース格の武田翔太(23)は「常に自分を追い込んでいる。彼は本物のストイック」と畏敬(いけい)の念を抱いている。
 たとえば食事。バンデンハークは絶対にジャンクフードを口にしない。
「野球選手だからではなく、一人の人間として、健康であるためにね。甘いソーダやアルコールも飲みません。サプリメントも植物由来のものを選んでます」
 戦いはグラウンド外から始まっていると言わんばかりの、まさに完璧主義。だが、そう水を向けると首を横に振った。
「準備はものすごく大事です。ですが、それ以上に柔軟性が大切だと思います。シーズン中は移動が多く、疲れも溜(た)まってくる。オフの時間をしっかりとることを心がけています。よく『登板までルーティンは何?』と質問されますが、あえて作らないようにしている。型にハメ過ぎると思考回路がストップしてしまうから。だから周りが思うほど完璧にしているわけじゃないよ(笑)」
 バンデンハークは野球選手としては珍しいオランダ本国生まれ。かつての苦労が現在に生きているという。
「ボクはメジャーリーガーになりたかったけど、オランダは野球が盛んじゃないから9人集めるのもやっと。夢を叶えるために、16歳で単身アメリカに渡り、マーリンズのアカデミーに入りました。まず、英語の勉強から始めたよ(笑)」
「野手は毎日試合に出られるから」と18歳でキャッチャーとして契約するも、オランダでは満足に練習も試合もできなかった彼と周囲のレベルの差は歴然。
「追いつくため、同僚の何倍も厳しいメニューを自分に課した。それがあるからいまの自分があるのは間違いないけど、コンディションはメチャクチャ。ルーティンに縛られ過ぎるのはよくないと気づいたのはそのときです」
 後にピッチャーに転向。メジャーでは3球団を渡り歩いて8勝と芽が出なかったが、’13年に入団した韓国リーグ・三星(サムスン)ライオンズでの出会いが彼を変えた。
「以前は上体をグッと押し込むようにして投げていたのですが、門倉健投手コーチ(元中日など)の助言でスッと体重移動して投げるフォームに変えました」
 結果、制球力が飛躍的に上昇。三星のリーグ制覇に大きく貢献した。
 そしてもうひとつ――美人妻として、度々、テレビ中継に登場するアナ夫人の存在も大きい。遠征先には必ず同行し、スタンドで大きな声援を送る。
「ボクは人生のほぼ半分を外国で暮らしている。彼女とはアメリカ時代からずっと一緒で、彼女のサポートがなければ成功はなかった。感謝するばかりです」
 アナ夫人は祖国の栄養士と連絡を取り合って、夫の身体を気遣った手料理を振るまう。車の運転も彼女の仕事だ。
 5月17日の日本ハム戦で7失点KO。連勝記録が途絶え、バンデンハークは「ストライク先行の自分の投球スタイルができませんでした」と反省の弁を述べた。
 だが、視線は真っ直ぐ前を向いていた。
 どうすればもっといいピッチャーになれるのか――投手としてのキャリアはまだ十数年。いまだ発展途上の怪物は、この敗戦も肥やしにするだろう。
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糸井嘉男、秋山翔吾らが「厄介」と口を揃えるのがこの強烈な腕の振りだ
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「連勝記録は彼の野球に懸ける情熱の高さの表れ」と工藤公康監督も絶賛
取材・文/田尻耕太郎 撮影/繁昌良司
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