シリーズ 有名人たちのもう一つの顔「私、マニアです」第7回 歌手 なぎら健壱

銀塩カメラオタク

「20歳でとりつかれて、200台以上持ってるよ」
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「カメラを見ると『これでいい写真が撮れるはず』と思い込んでしまうんです。とくにクラシックな銀塩(ぎんえん)カメラには、メロメロになります。精密機械らしい美しさがある。いつも2万~3万円までなら買ってもいいかなと考えているんですが、ひと目惚れすると数十万円出すこともあります。酔っぱらっているとダメですね。勢いで新宿や銀座の中古カメラ店、ヤフオク!などで衝動買いしたり、取り置きを頼んでしまうんです」
 フォークシンガーで俳優のなぎら健壱(64)は苦笑いする。彼は落語や絵画鑑賞、散歩など多くの趣味を持つが、カメラ収集歴はとくに長い。ライカやFOCA、トプコン35―L、スーパーイコンタ533/16、レオタックスK3など、所有するカメラは200台以上になる。
「カメラに興味を持ったのは、デビュー間もない’73年ごろ。20歳のときです。当時はおカネがなかったので、地方にコンサートに行っても会場や宿にこもりっきりになることがほとんどでした。でも先輩シンガーでよくご一緒していた高田渡さんは、いつも一眼レフのニコマートで町を撮っていた。『重たいのにご苦労なこった』と思っていましたが、あるとき高田さんが撮った写真を見せてくれたんです。『へぇ~、いいねぇ。アタシもやってみよう』という軽いノリで、高田さんと同じニコマートを買いました。カメラを持っていると時間が空くたびに出かけて土地土地の風景を撮影するようになり、徐々にハマっていったんです」
 地方だけでなく、東京にいるときも外出時にはカメラを手放さなくなった。’05年には『東京のこっちがわ』(岳陽舎)という写真集まで出している。
「ただフィルム代も現像代も高いでしょ。それにまとめて現像しても、ちゃんと整理しないと、どこでいつ撮った写真なのかわからなくなってしまう。それでデジタルカメラも多く使うようになりました。それでも銀塩カメラの魅力には勝てませんよ。一台一台個性があり、シャッター音やフィルムを巻くときの音がたまんない。手作業で部品を削り、レンズを磨く職人の顔が見えてくるようです。銀塩カメラの代表ライカはもちろん、コピーライカも素晴らしい。なかでもイギリスのリードⅢはテーラーホブソンというメーカーの純正レンズをつけ、性能は本家をしのぐと言われています」
 カメラの魅力を教えてくれた高田渡は’05年4月に亡くなった。なぎらは高田の持っていたニコマートを、形見としていまでも大切に保管している。
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なぎらのカメラコレクション。月刊「日本カメラ」ではエッセイ連載中
PROFILE
なぎら・けんいち ’52年、東京都生まれ。西岡たかしや高石ともや、高田渡の影響を受け、フォークソングに傾倒。’70年の全日本フォークジャンボリーでデビュー。’72年、ファーストアルバム『万年床』をリリース。著書に『酒場のたわごと』(実業之日本社)など
PHOTO:小松寛之
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