今年も「バター不足」原因は農協の「地域独占」施策

50年前の制度がまだ健在、
ついに小泉進次郎も参戦した
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都内スーパーの乳製品売り場。手ごろな価格のバターから売れていく
「この3年ほど、どこもバターの入手に苦労し、近所には閉店したケーキ屋もあります。今年もバター不足で1ポンド(約450g)あたり40円ほど価格が上がっています。われわれにとっては死活問題なんです」(洋菓子店オーナー)
 農林水産省は5月31日、バター6000tを緊急輸入すると発表した。不足分を埋めるための緊急輸入は、3年連続6回目だ。
 いったいバター不足が毎年、生じてしまうのはどうしてなのか。
「農水省の生産統制の失敗によるものです。バターの9割は北海道で作られていますが、これは国の補助金制度があるからです。硬直的な制度が酪農家の自由な活動や流通の合理化を阻害しています」(農業ジャーナリスト・浅川芳裕氏)
 問題の根幹にあるのが、50年前にできた「指定生乳生産者団体制度」だ。原則的に酪農家は、生産した生乳を全国に10ある地域ごとの指定団体(農協)に出荷しないと、補助金をもらうことができない。50年前は乳製品の運搬技術が未発達だったためにできた制度だが、それがいまも酪農家を縛っている。
 いわば農協の地域独占施策だ。
 今年4月、自民党の小泉進次郎農林部会長(35)は、指定団体制度について、
「供給過剰の時代にどう需給調整をして酪農家の経営を安定させるかという歴史的な役割を果たしてきたが、いまの時代に、これからの役割は何か、忌憚なく議論する機会だと思います」
 と発言し、改革を促した。
 北海道の農業生産法人ドリームヒルの小椋幸男社長が語る。
「卸値である乳価は1kgあたり牛乳は117円、バターは75円、チーズは67円と単価が細かく決まっています。取り分の大きい飲料用の牛乳にするのが、酪農家は一番うれしいんですが、北海道の指定団体『ホクレン』が管理している。指定団体制度も50年前はよかったんです。北海道と本州では距離もあるから、腐らないように加工する合理的な理由があった。でもいまは輸送技術も高度化し、長距離輸送ができるので、時代に合わなくなっている面もある」
 また、農水省は近年、チーズの輸入が増えているのを受け、国産チーズ増産をめざし、’14年に「チーズ補助金」を始めた。
「指定団体は、バターが不足しているなか、チーズに加工してしまう。酪農家と消費者は蚊帳の外にされているんです」(指定団体から離脱した、田口畜産の田口廣之社長)
 足りなくなったバターは輸入するしかないが、商社などが輸入しようとすると400%近い関税がかかってしまう。低関税の輸入枠は、農水省の天下り団体「農畜産業振興機構」に独占されている。
「消費者は国際価格の何倍もするバターを買わされているんです」(元農水官僚でアナリストの山下一仁氏)
 5月19日の政府の規制改革会議では「指定団体制度の是非」などが盛り込まれた答申書がまとめられた。小泉氏も「画期的な一歩だ」と鼻息が荒いが、農水族議員の反発は大きい。仮に自由化されれば、北関東や九州などの酪農家は北海道産牛乳の攻勢にさらされる。農水族議員にとっては死活問題になるからだ。
 矛盾だらけの農政を突破できるか――小泉氏の双肩にかかっている。
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農政改革を推し進める小泉進次郎氏。父のように抵抗勢力をなぎ倒すことはできるのか
PHOTO:會田 園(スーパー) 鬼怒川 毅(小泉氏)
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