税金1兆円をつぎ込む東北の巨大防潮堤、ただいま建設中

高さ10m以上、全長400㎞!…
住民からは「津波が来ても確認できない」と不満
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大船渡市門之浜の防潮堤。この地区では高さ12.8mの壁が1.5㎞にわたり続く。住民の中には「こんなムダなモノを作って喜ぶのはゼネコン業界だけ」と怒る人も
 東北に長大な防潮堤が作られている。東京―名古屋間の海岸線とほぼ同じ総延長400㎞。1兆円の税金が使われる壮大なプロジェクトだ。
 発端は’11年9月に開かれた国の中央防災会議である。東日本大震災で1万9000人を超える犠牲者を出したことを受け、同会議は百数十年に一度の大津波(レベル1)に耐えるための対策を作成。これを受け岩手、宮城、福島の3県は、最高15.5mの巨大防潮堤の建設を決定したのだ。
 しかし住民の間には安堵の声どころか、不満や怒りが広がっている。岩手県大船渡(おおふなと)市の門之浜(かどのはま)漁港近くに住む、80代の女性が話す。
「毎日海を眺めて生活してきましたが、防潮堤ができてから家の庭から見えるのは味気ないコンクリートの壁だけです。そもそも住民の家の多くは高台にあります。海沿いの低地は建設制限がかかったので、もう人は住めません。そんなところに巨大な壁を作って、何を守るというのでしょうか……」
 山間の谷間にある岩手県宮古市の女遊戸(おなっぺ)の宿(やど)漁港海岸にも、高さ14.7mの防潮堤を建設中だ。東日本大震災の津波で自宅を流された、同市在住の山根清見さん(59)は「高い防潮堤はかえって危険」と指摘する。
「15m近い壁があったら、津波が来ているのを陸側から確認できません。防潮堤があるから安心、と避難しない人も出てくる。逆に危険な存在なんです。しかも完成させた後も、維持費はかかり続ける。こんなデメリットばかりの壁に莫大な税金を投入するなんて、バカげています」
 宮城県選出の参議院議員・和田政宗氏(日本のこころを大切にする党)も、行政の強引なやり方を批判する。
「意見が分かれ住民の総意が決まっていない地域でも、県は、計画を進めようとしています。中央防災会議で津波対策の座長を務めた河田惠昭さん(関西大学特別任命教授)ですら『意図したモノと違う』と苦言を呈したほど。反対意見があっても、役所は一度決めたことを変えられないのでしょう。やっていることがめちゃくちゃです」
 被災3県でもっとも多い5500億円の国費を投じる岩手県は、こうした指摘に対し次のように答えた。
「レベル1の津波を防げる高さの防潮堤を作るには、費用は適正だと考えます。高すぎて津波が見えないというご指摘がありますが、窓をもうけて海が見えるようなタイプもあるんです。防潮堤があるから逆に安心してしまうのではとのご指摘については、津波が来たら迅速に避難するよう住民の方々に声をかけています」(河川課)
 岩手県では建設工事が延々と続き、巨大防潮堤の完成は東京オリンピック後の2021年3月を予定している。
取材・撮影/桐島 瞬(ジャーナリスト)
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