連載 斉藤和巳の「エース脳」マウンドから見たドラマの裏側 第8回 二軍でしか活躍できない選手の共通点

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二軍では最優秀防御率争いの常連の秋山だが、一軍では新人時代(’10年)の4勝が最高成績
 タイガースの秋山拓巳(たくみ)投手(25)やドラゴンズの福田永将(のぶまさ)内野手(27)のように、二軍では素晴らしい成績を残しているのに一軍に上がると期待されたような結果を残せない。そんな選手は少なくありません。
 彼らはなぜ一軍で活躍できないのか。それは二軍のピッチング、二軍のバッティングを一軍でもしてしまうからです。
 例えば150㎞のストレートを持つ投手がいるとします。それだけ速ければ、二軍では簡単には打たれません。ランナーを得点圏に背負って相手打者は4番。カウントはバッター有利の3ボール1ストライクとします。自慢の速球なら真ん中付近に球が行っても空振りを取れる。バットに当てられてもファールになる。だから、コースはそこまで気にせず思い切って投げ込む。
 結果、打ち取れたとします。ここで「打者を抑えた」と思ってしまう投手は一軍でも同じ投球をしてしまうのです。一軍の打者は、甘い球はしっかりとらえてきます。そこで初めて「エッ!?」と思うのでは遅いのに、そういう投手が意外といるのです。
 一軍の主軸打者を前にすると「甘く行ったら打たれる」と不安になる。そんな考えが頭をよぎった時点で負けです。精神状態がまったく異なってくる。厳しいところに投げようとして、二軍のときのように強気で腕が振れず、自慢の真っ直ぐを殺してしまうのです。
 あるいは「このカウントでストレートは怖くて投げられない」と変化球を選ぶケースもあるでしょう。しかし、二軍では真っ直ぐで抑えられたので、変化球で打ち取る訓練をやっていない。うまくコースに決まって打ち取れたとしても、それはたまたまでしかなく、続くはずがないのです。
 二軍でしか活躍できない選手は、一軍で結果を残すための準備ができていない。いまやっていることの「先」に何があるのかを考えられない選手が多いのです。
 一軍で活躍する自分をイメージして、何が足りないのかを考え、さまざまなことを試し、答え合わせを重ねる。そうして初めて自分の軸になるものが見つかります。
 僕が二軍にいたころ、真っ直ぐとフォークだけである程度、抑えられるようになったときに「これだけでは一軍で通用しないだろう」と考え、キャッチャーにあるお願いをしました。「フルカウントなど、投手が苦しい場面でカーブを要求してくれ」と言ったのです。将来を見越して磨(みが)いたカーブは、後に大きな武器となりました。
 一軍と二軍を行ったり来たりしている選手、一軍でレギュラーになりきれない選手は、この「考える力」が不足しているか、考えることを怠っているのです。
 結果が出ないときだけでなく、調子がいいときも、常に自分を分析して理解し、対策を練って、試行錯誤する。この作業を続けられる選手だけが、一軍でエースや主力選手になれるのです。
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さいとう・かずみ/’77年京都府生まれ。プロ通算79勝23敗、勝率7割7分5厘。右肩の故障に泣かされながらも「負けないピッチング」で沢村賞を2度受賞。太く短く生きたホークス伝説のエース
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