連載 斉藤和巳の「エース脳」マウンドから見たドラマの裏側 第11回 5年ぶりに復活! ヤクルト 由規に送ったアドバイス

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一度は育成契約となったが、’11年9月3日の巨人戦以来となる復帰登板を果たした由規
 7月9日の中日戦でヤクルトの由規(よしのり)(26)が右肩の腱板損傷を乗り越え、約5年ぶりの一軍復帰登板を果たしました。
 かつてのようなダイナミックな投げ方ではなくなり、球威も落ちましたが、そのぶん、まとまりのあるフォームになって制球力が上がりました。球速も、以前よりは遅くなったとはいえ、140㎞台後半が出ていましたし、スライダーのキレの良さも目につきました。今回は5回6失点で負け投手になりましたが、本当の勝負は次の登板から。今回に限ってはマウンドに帰ってきたこと、5イニング投げられただけで満足していいと思います。本当によく戻ってきたと思います。同じ右肩を故障し、手術、長いリハビリ生活を経験した者として、尊敬します。それくらい、投手が肩にメスを入れ、長期のリハビリを経て復帰するというのは厳しいものなんです。
 僕も右肩腱板の損傷、断裂によって6年のリハビリを余儀なくされたのですが、ストレスを感じない日はありませんでした。
 ちょっと良くなったと思ったら、一気に悪化して振り出しに戻ることも珍しくない。いい意味での大きな変化は望めず、地道なトレーニングを積み重ねるだけの日々。誰かに追いかけられていたり、高いところから落ちそうになるといった悪夢を2ヵ月近く、見続けたこともありました。
 だからこそ、かつて僕のリハビリを担当してくれたヤクルトの橘内基純(きつないもとずみ)トレーナー(前ソフトバンク・三軍コンディショニングコーチ)を介して由規と昨春のキャンプで会ったときは、いろいろとアドバイスさせていただきました。
 ピッチングは身体全体を使ってするもの。プロでなくとも投手なら誰でもわかっていることですが、肩を壊すと、一日中、肩のことを考えてしまう。僕もそうでした。由規には「肩のリハビリも大事だけど、肩はどの筋肉と連動しているのか、身体をどう使って投げているかをあらためて考えてトレーニングすることも大事」だとアドバイスしました。脳が認識することで身体の組織全体に伝達され、変化が起こる。小さなことかもしれないけど、積み重ねが大事だと思うと。そして、こうつけ加えました。
「これだけ苦労してやってきたのだから、目標を達成したときには、由規にしか見られない景色が絶対にある。俺はそれを見ることができなかったけど、おまえは頑張れ」
 今回、スタンドのファンから拍手喝采で迎えられる由規を見て、僕が思い描いていた景色はこれだと羨(うらや)ましく思いました。登板後、電話で話した由規は「夢の中にいるような感じでしたが、思ったほど緊張もしませんでしたし、意外と冷静な自分がいました」と清々(すがすが)しかったですね。冷静でいられたのはリハビリ中、この景色をイメージしながら頑張っていたからでしょう。
 今後はこの経験を由規にしかない武器として、投球に生かしていってほしいです。
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さいとう・かずみ/’77年京都府生まれ。プロ通算79勝23敗、勝率.775。右肩の故障に泣かされながらも「負けないピッチング」で沢村賞を2度受賞。太く短く生きたホークス伝説のエース
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