シリーズ 有名人たちのもう一つの顔「私、マニアです」第17回 やくみつる(漫画家)

トイレットペーパー
「30年かけて、2000種類を収集」
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「きっかけは’87年ごろ。まだ町を走っていた、ちり紙交換業者を利用したときです。パッケージにベートーヴェンの『月光』の楽譜が印刷された、『心のときめき』というトイレットペーパーをもらいました。レオタードを着た女性が描かれ、妙に哀愁の漂うデザインでね。これは面白いと、ボクの収集癖にスイッチが入ったんです」
 漫画家のやくみつる(57)は、30年来のトイレットペーパーコレクターだ。所有銘柄は国内約1500種、海外約500種にのぼる。
「スーパーで売っているような、普通のトイレットペーパーはありません。集めているのは、パッケージが面白い珍種ばかりです。自宅の四畳半一間が、〝トイレットペーパー部屋〟になっています。本体そのものを保存しておきたいのですが、とてもスペースが足らない。入りきらないモノは、パッケージをA3のノートにスクラップしているんです。もう30冊くらいになったかな」
 収集場所は、地元(東京都世田谷区)で開かれるボロ市などだ。トイレットペーパーを扱っているというのも驚きだが――。
「ボクの趣味を知っていて、吹っかけてくる古物商もいるんです。数年前には砂漠にサボテンの絵が描かれた、『さぼてん』というレア銘柄を売り込まれました。値段は1ロール1500円! 市販の30倍ですよ。でも、そのレア銘柄を見つけてきた労に報いて買いました。友人たちが、全国各地から送ってくるケースも多いですね」
 それでも入手できないモノもあるという。
「幻の4大銘柄と言われる『十和田(とわだ)』『オリオン』『天龍』『エベレスト』(いずれも製造中止)です。知り合いにも頼んでいるんですが、なかなか出てこない。とくに『十和田』は十和田湖畔に建つ乙女像が印刷され、素晴らしいんですよ」
 ’94年には『原色トイレットペーパー大全』(扶桑社)という本まで出版した。
「手間がかかったわりに重版もかからず、絶版になりました……。そりゃ、フツウの人はトイレットペーパーの本など買いませんよね。ただ日本製のモノは、紙質もデザインも世界No.1。ボクが集めないと、製造中止となった珍種は世の中から忘れ去られてしまいます。誰かトイレットペーパー博物館を作ってくれる、奇特な人はいないかな。そうすれば、喜んでコレクションを寄贈するんですが」

PROFILE
やく・みつる ’59年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業後、はた山ハッチの名前で漫画家デビュー。プロ野球や相撲のコメンテイターとしても知られる。有名人のタバコの吸い殻や使用済みストローなど珍品収集家。日本昆虫協会の副会長も務めている
PHOTO:小松寛之
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