連載 斉藤和巳の「エース脳」マウンドから見たドラマの裏側 第16回 急失速! ソフトバンクに何が起きているのか?

連載 斉藤和巳の「エース脳」マウンドから見たドラマの裏側 第16回 急失速! ソフトバンクに何が起きているのか? 画像1
8月23日、負傷降板する抑えのサファテ。工藤監督(左)は「いるのといないのとでは全然違う……」

 パ・リーグの優勝争いが、いよいよ激しくなってきました。一時、ソフトバンクが日本ハムに最大11.5ゲーム差をつけて独走していたものの、7月ごろから失速。8月25日にはついに、首位から陥落しました。翌日すぐに抜き返しましたが、最後の最後まで目の離せない展開になっています。

 王者・ソフトバンクに何が起きているのか。7月以降、打線が低調であることが大きな要因として挙げられています。それは否定しませんが、僕には交流戦のころから気になっていたことがありました。

 それは、若い先発投手の代えどきです。

 たとえば6月10日の巨人戦。ソフトバンクの先発・東浜巨(ひがしはまなお)(26)はジャイアンツ打線を6回まで無失点に封じ、1点リードを守っていました。被安打2、与四球1と内容もよかった。ところが7回表、先頭の坂本勇人(27)にレフト前に運ばれ、続く長野久義(31)が内野安打で続くと、ベンチはスアレス(25)へスイッチしました。

 たしかに試合が動きそうな雰囲気はありましたが、僕は東浜に任せてよかったのではないかと思いました。ピンチを切り抜けられれば自信になりますし、打たれたとしても今後の糧(かて)になるからです。

 これは東浜に限ったことではありません。今季ここまで11勝を挙げている千賀滉大(せんがこうだい)(23)ですら、好投しながら「接戦だから」という理由で、早めにマウンドを降ろされる試合が何度もありました。

 盤石のリリーフ陣をつぎ込んで、勝てる試合を確実に取る――ベンチの戦略は理解できます。ただ、当時はまだ、2位以下のチームとのゲーム差はかなり開いていた。

 シーズン終盤の緊迫した試合でも自信を持って投げられるよう、いまのうちに経験を積ませておくべきではないか。勝負の秋に備えて若い先発投手を1イニングでも長く投げさせ、ブルペンを休ませておくべきではないか――僕はそう思っていました。

 案の定、後半戦に入ると東浜は負けが込み、約50試合に登板している森唯斗(もりゆいと)(24)やスアレスら、勝ちパターンのリリーフ陣が打ち込まれる場面が目立ち始めました。登板過多のシワ寄せでしょう。54試合に投げている守護神・サファテ(35)が負傷降板したときはヒヤリとしました。

 口にこそ出しませんが、ソフトバンクの選手たちに焦(あせ)りが感じられます。この苦境を打破するために何が必要か。エースとして僕が意識していたのは「変わらないこと」。

 ピッチングで勝利をもたらすことも大事ですが、登板機会は週1度。極端な話、自分以外の先発が負けてしまえば1勝5敗です。結果で示すことも大事ですが、練習中やロッカーにいるときなど、あらゆる場面でいつもどおりの姿を見せる。それがチームを落ち着かせることにつながるのです。

 先々のことを考えると、若きエースの武田翔太(23)には、「背中」でもチームメイトを引っ張ってほしいですね。

斉藤和巳の「エース脳」
さいとう・かずみ●’77年京都府生まれ。プロ通算79勝23敗、勝率.775。右肩の故障に泣かされながらも「負けないピッチング」で沢村賞を2度受賞。太く短く生きたホークス伝説のエース
あなたにオススメ

FRIDAY GOLD

10月18日発売
friday gold