日本人の常識を覆す「メガ台風」の爪痕

北上しても勢い衰えず、
殺人豪雨をもたらす
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台風10号の最大瞬間風速は65m。この強さだと電柱や巨大な樹木もなぎ倒される。例年、台風は10月までに月5個ほど発生し、2~3個が日本列島に接近、もしくは上陸している
 じわじわと水位が上がっていた。
 認知症をわずらう70~90代の男女9人が入所する、岩手県岩泉町の高齢者グループホーム「楽(ら)ん楽(ら)ん」。
 8月30日の午後6時すぎ、台風10号による小本(おもと)川氾濫の影響で玄関先が浸水し始めた。それから約1時間半後。急激に勢いを増した泥水は玄関ドアを水圧で破壊すると、平屋建ての施設内に流れ込んだ。胸まで水に浸かった50代の女性所長は片手で柱に摑まり、もう片方の手で男性入所者の身体を支えていたという。
「がんばって、がんばって!」
 所長は男性を励まし続けたが、しだいに反応がなくなっていく。それでも所長は男性の手を離さなかった。
 翌31日の午前5時ごろ。自分の名前を呼ぶ施設管理者・佐藤弘明常務理事の声が聞こえた。
「はい……」
 所長は力なく答えた。水が引いた床の上で、男性は冷たくなっている。くっきりと壁に残った浸水の痕跡は、天井から10㎝ほど下にまで達していた――。
 北海道、東北地方を中心に、台風10号は殺人的な豪雨をもたらした。8月29日、30日の両日で、岩手県岩泉町の積算雨量は248㎜。同町の8月の1ヵ月平均総雨量157㎜をはるかに上回る。「楽ん楽ん」で溺死した9人をはじめ台風10号により18人が死亡、2人が行方不明。橋の崩落や土砂崩れなどで、700人ほどが孤立している(9月6日現在)。
 9月1日には、台風12号が沖縄県の南海上で発生。9月3日に鹿児島県十島村で1時間に129㎜という50年に一度の猛烈な雨を降らせるなど、各地に大雨をもたらした。岩泉町でも12号の直撃に備え、一時、町全域に避難指示が出された。
「長年、この地域に住んでいますが、台風の直撃なんて経験したことがありません。家の中は泥だらけ。町内には高齢者が多く、復旧はままならない。再び台風に襲われれば二次、三次被害も出るのではと心配です」(60代の男性住民)
 続発するメガ台風の動きは、専門家の常識も超えている。琉球大学理学部准教授の山田広幸氏が語る。
「気象庁の台風進路情報は’51年から残っていますが、東北に上陸、北上したのは初めてです。通常なら200~300㎞ほど東の沖合を進みます。今回は日本の南海上に反時計回りの低気圧、東海上に時計回りの高気圧があったため、湿った空気が持続的に東北地方に向かい台風の勢力が衰えなかったのでしょう。今後も気圧配置により、日本列島のどこにでも巨大台風が上陸してもおかしくありません」
 9月6日には九州南の沖合に、再び巨大な台風13号が発生している。
PHOTO:読売新聞/アフロ
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