連載 斉藤和巳の「エース脳」マウンドから見たドラマの裏側 第17回 二軍で好投! だが松坂大輔よ、焦りは禁物だ

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フォームが改善して球速は147㎞まで回復。松坂本人も「140㎞台のカッターが投げられたのは収穫」
  ソフトバンクの松坂大輔(35)が8月25日、二軍戦で103日ぶりに登板しました。
  結果は1回無安打無失点。その試合を解説したのですが、これまで見た中でもっともいいフォームで投げていました。真っ直(す)ぐは最速144㎞。全盛期のボールにはまだまだ及びませんが、スピードも出ていました。
  一番のポイントは、左足に体重を乗せられるようになったこと。極端に言うと、これまではステップしながら投げていた。いわゆる立ち投げに近い状態でした。
 それが、軸足に体重を残して、粘ってから前へ体重移動できるようになった。「間(ま)」ができたことで、下半身のパワーが上半身に伝わるようになり、スピードも球威も上がったのです。
〝恩恵〟はまだあります。前方に体重移動してから投げられるようになったことで、リリース位置がキャッチャー寄りになった。球離れが遅くなったぶん、変化球が曲がり始めるのも遅くなったのです。打者からすると、身体の近くで変化するようになるから、対応が難しくなる。松坂は非常に器用な投手で、手先だけでスライダーやカットボール、チェンジアップなど、多彩な変化球を操ることができるのですが、フォームが良くなったことで、変化球の「質」が向上しました。まだ「間」は不十分ですが、逆に言えば今後、松坂のピッチングが良くなる余地が十分にあるということ。復帰2戦目は3回無失点、3戦目は5回1失点と好投が続いていますが、どんどん状態を上げていってほしいです。
 ただし、気になるところもありました。試合前の練習でのキャッチボールです。ほとんど下半身を使わず、手投げのような形で投げていたのです。たとえ無意識でやっていたのであっても、悪い動きをしていると身体がそれを覚えてしまうことがある。エースの姿は皆が見ていますし、キャッチボールも大事にしてもらいたいですね。
 あとは焦らないこと。工藤公康監督は9月中に一軍で投げさせる可能性を示唆(しさ)しましたが、これまでも松坂には復帰を急いで、状態を悪化させたフシがある。
 僕も右肩を手術して長いリハビリ生活を送りましたが、肩は非常に複雑で、順調に回復することは絶対にない。山あり、谷ありです。早く投げたい。協力してくれる人たち、応援してくれる人たちに恩返しがしたい。そんな気持ちから、焦ったり、苦しんだりしたものです。
 しかし――ここで無理をして、痛みが出て後戻りすることにでもなったら、精神的に相当キツい。だから、今季は一軍で1試合でも投げられればいい。仮に一軍で投げられずに終わったとしても、投げられる状態でシーズンを終わるのと、リハビリの状態で終わるのとでは、オフの迎え方が全然違います。これだけの投手なので復帰を待望されるのは当然なのですが、来季も見据えて、慎重にやってもらいたいです。
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さいとう・かずみ●’77年京都府生まれ。プロ通算79勝23敗、勝率.775。右肩の故障に泣かされながらも「負けないピッチング」で沢村賞を2度受賞。太く短く生きたホークス伝説のエース
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