10.20ドラフト 注目6投手を支える「家族の物語」

金の卵はグラウンドだけで作られるわけではない
※プロフィールの球団略称は1位指名を検討しているチーム
大学生

柳 裕也
[明治大]
22歳/宮崎県出身
180㎝ 80㎏/右投げ右打ち
ヤ 巨 中 De
10.20ドラフト 注目6投手を支える「家族の物語」 画像1
横浜高では1年秋からベンチ入り。2年春からエースとして3季連続甲子園出場。大学では1年春に六大学デビュー。カットボール、スライダー、カーブに最速150㎞の速球を持つ。六大学通算300奪三振は、’10年の早大・斎藤佑樹以来史上15人目の快挙だ
 10月20日に行われるプロ野球ドラフト会議。今年は投手が豊作だ。将来のエース候補には、メンタルや肉体の強さが必要だろう。1位指名が予想される6人の〝金の卵〟がどういう環境で生まれ育ったのか、家族とのエピソードから振り返る。
●グラブに「母への恩返し」の刺繍
「絶対にプロ野球選手になるんだという強い気持ちで、いつもプレーしています。プロに入っておカネをたくさんもらえたら、女手ひとつで育ててくれた母が喜んでくれますから」
 明治大学のエース柳裕也(22)が語る。
 柳は宮崎県都城市の「志比田(しびた)スポーツ少年団」に所属し、小学6年のときには全国優勝を果たした。だが、その直後に父親が交通事故で亡くなってしまう。
「よくキャッチボールをしたり、球場へ車で送迎してくれました。父は野球経験がなかったので技術的なアドバイスはありませんでしたが、『野球を通じて人への感謝の気持ちを学びなさい。チームメイトや指導してくれる人に礼を失しないように』と言われたことを覚えています」
 以来、柳は幼稚園教諭の母親・薫さん(46)に育てられる。
「母はツラそうな顔は見せませんが、苦労をかけていると思うんです。いつか必ず恩返しをする。そう決めていました」
 柳は名門・横浜高に進学。高校時代のグラブには「母への恩返し」という刺繍を縫いつけていたという。同校の元野球部長・小倉清一郎氏が振り返る。
「柳が明大進学を希望した時、私は反対しました。『学費などはどうするんだ?』と聞くと、『父が残してくれたおカネが800万円ほどあります』と答える。でも明大で4年間すごせば、寮費など1000万円以上かかります。私は特待生として授業料などが免除される日体大を勧めたんですが、柳の決意は固かった。よく聞けば、柳は『六大学の舞台に立ちたい』と言うんです。『母親に神宮で活躍する姿を見せたい』と」
 薫さんは旅費を貯めては、柳の登板試合を観戦している。小倉氏も上京した薫さんとたまに顔を合わせるが、よくこう言われるという。
「生活はラクではない。でも大丈夫です。息子が好きなことをやってくれているのが、親として嬉しい。プロのユニフォームを着てマウンドに立っている姿を見たら、泣いてしまうかも」
●寮の冷凍庫に母親の手料理を常備
 創価大学の田中正義(せいぎ)(22)は、練習後チームメイトに「ラーメンを食いに行こう」と誘われても決してついていかない。ラーメンだけではない。「不必要なモノは口にしない」のだ。寮で同部屋の野球部マネージャー戸田敬さん(2年)が話す。
「身体の管理に関しては、本当にストイックです。いまの体調なら何が必要なのかネットで調べ、毎日20種類以上のサプリメントを飲んでいるんですよ」
 田中は数人の選手を食堂に集め「疲れたときにはこのサプリがいい」などと、即席の講義を開くこともある。ここまで食事に気を遣うのは、独学で栄養学を学んだ母親・鈴香さん(48)の影響が大きい。鈴香さんは田中に最高のコンディションで野球をしてもらおうと、野菜や魚中心の料理を1週間分作り、寮の冷凍庫に常備してもらっているのだ。
「これには岸(雅司)監督も苦笑いしています。監督の奥さんは寮生にスナック菓子を出してくれるんですが、田中は一切食べない。仕方なく田中にだけ、ミカンやキウイなどの果物が出されるんです。寮の食事が出ない休みの日に、他の選手がコンビニのサンドウィッチなどを買っている時も、田中は一人で冷凍庫に常備してある母親の手料理を食べています」(同校野球部関係者)
●食事もトレーニング法もお任せ!
 桜美林大学の佐々木千隼(ちはや)(22)の母親・浩子さん(48)も栄養士で、息子の食事をサポートしている。佐々木は実家暮らし。浩子さんは肉が好物の佐々木の食事が偏らないよう、バランスやカロリーを考え料理を工夫しているという。
「浩子さんは、トレーニング法についても勉強しています。入学時に70㎏しかなかった千隼の細身の身体を問題視し、『ウェイトトレーニングを取り入れてみたら』と勧めたんです。それまでウェイトなどやったことのなかった千隼は、2年生の秋から本格的に挑戦。1年で体重が10㎏以上増えました」(スポーツ紙記者)
 体重増加は球速のアップにつながった。2年生まで140㎞台半ばだった速球は最速153㎞に。4年生になると、巨人の菅野智之に並ぶ首都リーグ記録の7完封を果たすなど圧倒的安定感を見せている。
●甲子園で亡き祖父の遺骨を胸に
 今夏、作新学院の今井達也(18)が甲子園で優勝を決めた時、胸には小型カプセルのついたネックレスがあった。中に入っていたのは、今年4月に79歳で他界した祖父・敏夫さんの遺骨だ。同校の野球部長・岩嶋敬一氏が語る。
「高校野球連盟の規則で、試合中にネックレスをつけることは禁止されています。本人には『つけちゃダメだ』と注意したんですが、『絶対にわからないようにしますから』と言ってきかない。遺骨が入っていることは知っていましたが、お祖父さんへの思いが強かったのでしょう。甲子園では見つかりましたが『祖父思い』ということで、お咎(とが)めなしでした」
 岩嶋氏によると、敏夫さんは今井が野球を始めた小学1年生のときから、テレビのプロ野球中継を見ながら投手のイロハを教えていたという。
「ピッチャーの原点は外角低めだぞ」
 何度もこう諭(さと)した。今井は速球にこだわるあまり制球を乱し、高校2年の夏にベンチから外れたことがある。今井は原点に戻る。「いくら速くてもダメだ」と、祖父の教えに従いアウトローへのコントロールを磨きエースの座を摑んだのだ。
「『実力以上の力を出せたのは祖父のおかげ。甲子園には絶対に祖父を連れていきたかった』と話していました」(岩嶋氏)
 敏夫さんは亡くなる直前まで、病室で今井の投球映像を見ていたという。
●カミナリ親父の熱血教育
 履正社高の寺島成輝(なるき)(18)は、父親の厳しい教育のおかげで精神を鍛えられた。
「母さんにそんな態度をとるなら、もう弁当を作ってもらうな!」
 寺島が父親の明宏氏(49)に怒鳴られたのは高校2年のとき。母・浩江さん(49)に口答えしてナマイキだったのを見つかりカミナリが落ちた。以来、明宏氏に許されるまでの3ヵ月間、寺島は登校前に自分で弁当を作らざるをえなかったという。
「明宏さんは、子どもを厳しく教育することで有名です。自分の服は、毎晩風呂に入る前に洗濯させるのが日課。反抗的な態度を見せれば、引っぱたくこともあります。宿題や試験対策もしっかりやらせる。おかげで寺島君は高校3年間で、5段階評価の平均が4点台後半と成績はバツグンです」(明宏氏の知人)
 9月まで台湾で行われていたU―18アジア野球選手権では、2試合12イニングを投げ無安打無失点だった寺島。大舞台で安定した力を出せるのは、メンタルの強さのためだろう。
●ジュニア五輪優勝者が横浜のエースに
 走り高跳び2m01――。
 横浜高の藤平尚真(しょうま)(18)は、この記録で中学3年のとき、日本ジュニア五輪で優勝。陸上選手として、60近い高校からスカウトを受けた。だが「千葉市シニア」で野球もしていた藤平に、熱心に誘ってくれる横浜に進学するよう説得したのは母・直美さん(40)だ。こう話したという。
「尚真が生まれたのは’98年。この年は松坂大輔投手の横浜が春夏の甲子園で連覇した年よ。何かのご縁じゃないかしら」
 藤平は1年生の秋から背番号1を背負い、横浜を牽引することになる。
「直美さんは、藤平の陸上としての能力より野球の才能に可能性を見出していたんです。横浜で大成した藤平は、自身のツイッターでも『産んでくれた母ちゃんに感謝。横浜に来て良かった』とつぶやいています」(スポーツ紙記者)
 金の卵たちは運命のドラフト会議でどの球団に指名され、プロのマウンドでどんな活躍を家族に見せるのだろうか。

田中正義(せいぎ)
[創価大]
22歳/神奈川県出身
186㎝ 91㎏/右投げ右打ち
ソ ロ 西 ヤ 巨
10.20ドラフト 注目6投手を支える「家族の物語」 画像2
小学校1年から野球を始める。創価高では主に外野手を務める。大学に入学してから投手に転向。2年時に大学日本代表に選ばれ優勝。最速156㎞の速球に、カーブ、スライダー、フォークが武器。東京新大学リーグ通算22試合で16勝1敗、防御率0.37

佐々木千隼(ちはや)
[桜美林大]
22歳/東京都出身
181㎝ 83㎏
右投げ右打ち
西 巨 神
10.20ドラフト 注目6投手を支える「家族の物語」 画像3
中学では軟式野球部に所属。都立日野高では、1年夏からベンチ入り。3年夏に西東京大会8強。首都大学リーグでは53イニング連続無失点の記録を達成。縦と横に大きく曲がる2種類のスライダーは圧巻。都立高出身者が1位指名されれば史上初の快挙

高校生

寺島成輝(なるき)
[履正社高]
18歳/大阪府出身 
183㎝ 85㎏/左投げ左打ち
日 オ 神 中
10.20ドラフト 注目6投手を支える「家族の物語」 画像4
小学生時代は「大阪茨木リトル」で通算108本塁打。甲子園では3試合に登板し22奪三振、防御率1.05の成績。50歳まで現役を公言し、目標は元中日の山本昌。寿司が好物でトロは最高で44貫完食したことがある。最速150㎞の速球にフォークなどが持ち球

藤平尚真(しょうま)
[横浜高]
18歳/千葉県出身
185㎝ 83㎏
右投げ右打ち
ソ 楽 オ 広 De
10.20ドラフト 注目6投手を支える「家族の物語」 画像5
中学時代「千葉市シニア」で全国大会優勝。高校では1年秋からエースに。最初で最後の出場となった今夏の甲子園では、初戦の東北戦で7回途中1失点の好投。最速152㎞の速球にスライダー、フォーク、カーブ、チェンジアップと変化球も多彩。夢は侍ジャパン入り

今井達也
[作新学院]
18歳/栃木県出身
180㎝ 72㎏/右投げ右打ち
日 ロ 楽 巨 広
10.20ドラフト 注目6投手を支える「家族の物語」 画像6
小学校1年生から投手として野球を始める。中学時代は「鹿沼レッドソックス」で全国大会出場。高校入学後は2年春からベンチ入りし、3年夏にエースに。今夏の甲子園優勝投手。U-18高校日本代表に選ばれ、エースナンバー18の背番号を背負った
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