連載 斉藤和巳の「エース脳」マウンドから見たドラマの裏側 第21回 城島健司に教えられた「エースの務め」

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エースが抑え、四番が打つ。普段着の野球ができたホークスが連勝でファイナルステージ進出
 プレーオフでは戦い方を変えるのか?
 よく聞かれる質問ですが、クライマックスシリーズの場合、相手はシーズン中に何度も対戦したチーム。お互いを知り尽くしていますから、僕がいたころのホークスでは、とくに戦い方は変えませんでした。特別な配球も準備しませんでした。
 意外に思われるかもしれませんが、この打者はどのコースが苦手か、カウント別や状況に応じての狙い球は何か――といった傾向は、年間を通して大きく変わりません。それはプレーオフであっても、です。
「真っ直ぐが速い投手に対しては初球の緩い変化球をスイングしづらい」という傾向があって、僕は現役時代、初球に真ん中のカーブを多投していましたが、引退するまで有効でした。カーブを狙ってフルスイングしてきたのは、日本ハム時代の小笠原道大(みちひろ)さんぐらいでしたね。
 相手を抑えて、チームを勝利に導く。
 とても大事なことですが、それは最低限の仕事であって、エースには他にも大事な「務め」がある。それを教えてくれたのは、ホークス時代にバッテリーを組んだ城島健司さんでした。
 僕が’03年に20勝をマークすると、次の年から城島さんのリードが変わりました。やたらとインサイドを要求したり、変化球のサインが多くなったりと、コースや球種が偏(かたよ)ったリードが増えたのです。
 ある日、城島さんはこう言いました。
「和巳、俺は2試合目、3試合目に投げるピッチャーのことも考えてリードしている。カードの初戦に先発するエースのお前には、後の試合につなげるため、厳しいリードをすると思う。内角ばかり投げさせる場面もあるだろう。でも、お前はそれをやらんといかん立場なんや」
 あえて、相手打者が得意とする球種やコースで勝負したこともありました。弱点を執拗(しつよう)に意識させたり、得意な球種、コースで打ち取って自信を喪失させることで、翌日以降に投げる投手を楽にさせる。そこまでやってエースだと言うのです。実力を認めてもらえたようで嬉しかった反面、「リードに応えてかつ、抑えなければ何の意味もない」と身が引き締まる思いでした。
 実力が拮抗(きっこう)するプレーオフでは、ちょっとした差が勝敗を左右する。短期決戦では1つの勝ち、負けがシーズン以上に重みを持ちますから、初戦に投げる投手のピッチングはより、重要になってくるのです。
 サインどおりに投げられているかどうかはバッテリーにしかわからないので、「エースの務め」を果たしているピッチャーがどれだけいるかわかりません。ただ、カープの黒田博樹(41)さんは著書で「意識づけを利用した配球」の重要性を訴えていますから、プレーオフではシーズン以上に「意図」を持ったピッチングをするのではないでしょうか。そこに注目して観戦してみるのも面白いと思います。
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さいとう・かずみ/’77年京都府生まれ。プロ通算79勝23敗、勝率.775。右肩の故障に泣かされながらも「負けないピッチング」で沢村賞を2度受賞。太く短く生きたホークス伝説のエース
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