連載 斉藤和巳の「エース脳」マウンドから見たドラマの裏側 第23回 カープを勢いづかせた大谷翔平の「致命的ミス」

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日本シリーズ第1戦4回、松山竜平は大谷の155㎞速球を右翼席に叩き込む Ⓒ共同通信社
 プロ野球史上最速となる165㎞を連発するなど、CSファイナルステージで圧倒的な存在感を示した日本ハムの大谷翔平。余勢を駆って日本シリーズ第1戦に先発しましたが、チームに勝利を呼び込むことができなかったばかりか、致命的なミスを重ねて、カープに勢いを与えてしまいました。
 1つ目のミスが出たのは、2回裏1死一、三塁の場面。大谷は打者・石原慶幸のときに、ダブルスチールを許して先制点を奪われました。一塁走者が走りましたが、セカンドもショートも二塁に入っておらず、捕手の大野奨太の送球も全力ではなかった。状況から見て、おそらく捕手からの送球を投手がカットするサインが出ていたはず。三塁走者の本塁突入を警戒するためです。しかし、大谷はしゃがんでしまった。
 ビジターの日本ハムにとって、絶対に与えたくなかった先制点。あの1点によって、広島ファンで埋め尽くされた球場全体が盛り上がりました。こうなると流れはカープです。その後、ストライクとも、ボールとも取れる際どいアウトコースのボールが何球かありましたが、審判の判定はボールでした。僕も経験がありますが、球場の雰囲気に審判の判定が左右されることは少なくありません。いつもの大谷なら、尻上がりに調子を上げていくのですが、ストライクゾーンを狭く感じたのでしょう、なかなかリズムを摑めませんでした。
 そんな中、もう一つのミスが発生します。それは「打たせてはいけない打者に打たれてしまった」こと。この日、「速球に強い」という理由で、4番には新井貴浩さんではなく松山竜平が起用されました。4回裏、その松山にソロアーチを浴びたのです。
 彼が活躍するということは、監督の選択がズバリ当たったということ。士気は高まり、チームは俄然(がぜん)、ノッてきます。
 あれはダメ、これはダメと制限ばかりしていると、気持ちが後ろ向きになり、思い切って腕を振れなくなります。本連載で何度か書きましたが、僕は大事な試合、厳しい戦いになるほど、「OK」を増やしました。
 たとえば、松山のホームランは0―1、無死走者なしで飛び出しています。僕ならばヒットはOKとする場面です。ホームランのみが不正解。となれば、もっと配球もコースも、日本ハムバッテリーは工夫できたはずです。
 その後のエルドレッドのホームランも、不用意なストレートを狙い打たれたもの。3回に変化球主体で1〜3番を打ち取り、立ち直るきっかけを作ったように見えただけに、4回の2本の本塁打での追加点がもったいなく感じました。
 初めての日本シリーズ。雨が降る中で6回3失点11奪三振はさすがです。しかし、大事な初戦で先制点を与えたこと、点の取られ方が悪かったことで相手を勢いづかせてしまった。大谷はエースの働きができなかったのです。
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さいとう・かずみ/’77年京都府生まれ。プロ通算79勝23敗、勝率.775。右肩の故障に泣かされながらも「負けないピッチング」で沢村賞を2度受賞。太く短く生きたホークス伝説のエース
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