映画『湯を沸かすほどの熱い愛』はなぜ泣けるのか

宮沢りえ主演、映画館ではハンカチ、タオルを手放せない観客が続出中
 観た人をグイグイと引き込み、問答無用で虜(とりこ)にしてしまう映画だ。
 いま、宮沢りえ(43)が主演する『湯を沸かすほどの熱い愛』に、絶賛の声が上がっている。
「この作品は、これまでの日本映画にはなかったニュータイプの"母モノ"です。主人公・幸野双葉(こうのふたば)は夫の一浩(オダギリジョー)に蒸発され、家業の銭湯は休業状態。さらに娘の安澄(あずみ)(杉咲花)は学校でイジメを受けて悲惨な毎日を送っている。そんな状況で、双葉は突然余命2ヵ月の末期がんと宣告されます。そして彼女は病気を受け入れたうえで、家族にありったけの愛情を注ごうとする。わかりやすい悲劇で"お涙頂戴"するのではなく、母の前向きで強い生き方を描いています」(映画評論家の宇田川幸洋氏)
 この映画、まず引きつけられるのが宮沢りえの渾身の演技だ。圧巻は、双葉が最期を迎えるシーン。死が迫り、痛々しいほどにやせ細っていく双葉を、宮沢は見事に演じきっている。これは、’14年に亡くなった彼女の母・光子さん(享年65)の存在が無関係ではないだろう。光子さんは晩年、病院に入らず自宅で息を引き取る道を選んだという。それを間近で見ていた彼女は、生きること、死ぬことのメッセージを母から受け取り、女優としての糧(かて)にしたのだろう。
 さらに娘役・杉咲花(19)の好演も光る。苛烈なイジメに傷つきながらも、母の言葉に励まされる安澄。山場の一つである出生の秘密が明かされる場面では、母・双葉の思いやりを初めて知り、号泣する姿が描かれている。その迫ってくるような演技に、観客もまた涙する。
 実際、本誌記者も映画館に足を運んだが、劇中、何度もホロリとしてしまうシーンがあった。そして館内を見渡せば、至るところからすすり泣きの声が聞こえてくるのだ。
 本作で脚本・監督を務めた中野量太氏(43)は、こう語る。
「この映画のテーマは、遺(のこ)された家族がどう生きていくか。実は僕自身、6歳のときに父を大腸がんで亡くし、兄とともに母の手一つで育てられました。それでも近所には従姉のお姉ちゃんたちや祖父、祖母が暮らしていたし、寂しいとは感じなかった。僕にとって、片親というのはネガティブなことじゃなかったんです。ただ、『家族ってなんだろう』というのは、小さいころからずっと感じていたことだった。そんな自分自身の原体験が、この作品に活(い)かされています」
 いまや日本中で感動を呼び、涙する観客が続出しているこの映画だが、実は"泣く"というのは、医学的にも効果が立証されているのだ。
 泣く効能について、脳生理学者で医師の有田秀穂氏はこう解説する。
「人間には、他の動物と違って"共感の涙"というものがあります。人は何かを見たり聞いたりして共感し、感動することで大脳の一部が興奮する。その興奮が引き金となって涙が流れることで、身体の疲労や蓄積していたストレスが軽減されます。だからこそ、現代人は定期的に"共感の涙"を流し、日々の疲れをリセットしたほうがいいんです」
 ストレスフルな生活を送り、疲れ果てている読者の方々。この秋は『湯を沸かすほど〜』を観て、思いっきり泣き、デトックスするのもイイかもしれませんよ。

『湯を沸かすほどの熱い愛』
新宿バルト9ほか全国公開中
脚本・監督:中野量太
出演:宮沢りえ、杉咲花/オダギリジョー

(c)2016「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会
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