連載 斉藤和巳の「エース脳」マウンドから見たドラマの裏側 第27回 4試合で29失点! 侍ジャパン「投壊」の原因

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強化試合では2試合にリリーフ登板。4イニングで5失点と精彩を欠いた千賀 (c)時事通信社

 WBCを見据えたメキシコ、オランダ代表との強化試合(11月10日〜13日)を最後に、’16年のプロ野球は幕を閉じました。

 来年の本大会を前に、代表の投手たちは不安を抱えたまま、オフに入ったのではないでしょうか。4試合で29失点。シーズンで蓄積した疲労の影響があったとはいえ、ファンも心配になる内容でした。

 とくに振るわなかったのが、千賀滉大(こうだい)(ソフトバンク)、石田健大(けんた)(DeNA)、田口麗斗(かずと)(巨人)ら初選出組です。

 なかでも、先発とリリーフ両方の経験を持つ千賀は〝使い勝手のいい投手〟として、首脳陣が大いに期待していましたが、第1戦では得意とするフォークの失投が目立つなど、余裕を失っているように見えました。

 バッテリーを組んだのは日本ハムの大野奨太。球数制限がある本番をにらんだ配球にしたのかもしれませんが、フォークの要求自体が少なかった。自分の形で勝負できず、苦しんだのではないでしょうか。以前、このコラムでも書いたように、急造バッテリーの弊害が出ていたように思います。

 もう一つ大きかったのが、使用球の違いです。僕も触ったことがありますが、WBC使用球は滑る。表面がツルツルしていて「これは神経を使うな」と思いました。

 日本の公式球はしっとりしていて、滑らない。目をつぶって握っても絶対にわかるぐらい差があります。松坂大輔が「WBC使用球は氷の上をノーマルタイヤで走る感じ。怖い」と表現したそうですが、チームメイトだった和田毅や杉内俊哉も「滑る」と言っていました。なら、日本のロジンバッグを持って行けばいい――かといえば、そうではない。サラサラで精巧に作られているから、かえって滑ってしまうのです。

 ボールが滑りやすければ当然、コントロールしづらくなります。しっかり握ろうとか、指先で何とかしようと意識するあまり、普段より疲れが出やすくなる。力(りき)んで腕が振れなくなり――いつものピッチングができなくなってしまうのです。

 国際球は縫い目が高いので、空気抵抗を受けやすくなり、変化球の曲がりが大きくなります。僕がオフにハワイのウインターリーグで投げたときは、スライダーなど横の変化球がよく曲がっていた印象があります。どんな投手も自分の変化球の曲がり幅のイメージを持っていますが、それが狂ってしまう。ストライクゾーンギリギリに決めていた球が外れてボールになったり、変化が大きすぎて見送られてしまったり。ほんの数㎝の違いですが、身体が覚えてしまっているので、調整は容易ではありません。

 これはもう、慣れるしかない。3月の本大会に向けて、日ごろから国際球で練習し、バッグに忍ばせて、時間さえあれば握るぐらいのことをしないといけないでしょう。扱いやすい球の感覚を取り戻すことはそんなに難しくないですし、日の丸を背負う責任感を持って取り組んでほしいですね。

斉藤和巳の「エース脳」
さいとう・かずみ/’77年京都府生まれ。プロ通算79勝23敗、勝率.775。右肩の故障に泣かされながらも「負けないピッチング」で沢村賞を2度受賞。太く短く生きたホークス伝説のエース
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