連載 斉藤和巳の「エース脳」マウンドから見たドラマの裏側 第30回 同じボールを続けていいとき、悪いとき

連載 斉藤和巳の「エース脳」マウンドから見たドラマの裏側 第30回 同じボールを続けていいとき、悪いとき


CS巨人戦で坂本相手にカーブを続けて、本塁打を浴びた今永は「反省する材料が詰まっている」

 今年のセ・リーグ新人王は阪神の髙山俊が受賞しましたが、記者投票で2番手につけたDeNA・今永昇太も非常にクレバーで良い投手です。CSの巨人戦で坂本勇人に痛恨の同点弾を浴びた翌日、新聞に載ったコメントを見ると、よく考えているのがわかります。

「カーブを(坂本勇人が)前でさばいていたので、直球を待っているのかな、と思った。次も同じカーブを選択したが、(スタンドへ)持っていかれてしまった」

 試合の中で同じコースに同じ球種を2球、3球と続けて打者を打ち取る場面があります。直前に球筋を見せているので投手にとっては怖さがある。しかし、そこに確たる根拠があるならば、同じ球で攻めることも勝つためには必要となってきます。

 たとえば、相手が「この球種は来るとわかっていてもタイミングが合わない」というデータがある場合。外国人選手には、外に逃げていく変化球を追いかける傾向のある打者が少なくありません。

 ただ、次に何を投げるかは、基本的に打者の反応で決めます。

 ピンチで右投手が右打者と相対したとしましょう。長打を避けたいので、外角のスライダーから入ります。それを打者はスッと見送りました。空振りをしたり、少しでもピクッと反応してくれたら、「外角の変化球への意識が強い」と見て次は懐(ふところ)へ、という選択肢も出てきます。この場合、悠然と外のスライダーを見送っているので、インサイドを狙っている可能性がある。

 このケースでは同じボールを続けてOKです。僕なら、前の球より少し外寄りにスライダーを放って、再度、追いかけてくる雰囲気があるかどうか確かめます。

 フォークなど別の球種を外に投げるという選択肢もあるでしょう。それは相手打者がどの球種を苦手としているか、その投手が得意とするボールは何かを考えて、バッテリーが判断します

 同じボールを続けるという配球は、打者のデータや細かな反応などから判断したうえでの選択でなくてはなりません。

 カウントによって狙いをガラリと変える打者もいますし、反応しているフリをする打者もいる。相手のクセも理解して、細心の注意を払わなければなりません

 特殊な決め打ちをしてくる打者も、同じ球を投げづらいですね。その代表例が西武の中村剛也です。中村は追い込まれるまで、「狙った球種を自分のタイミング、ポイント」でしか待たない。ときにとんでもない空振りをしますが、ハマったときは確実に捕える。だから打率は低くても、あれだけ本塁打が打てるのです。中村に関しては空振りを取れても、慎重にならざるを得ない。ほかの打者以上に同じ球を続けるのに勇気が要りますね。

 投手と打者の駆け引きを想像しながら、試合を観るのも面白いと思います。

斉藤和巳の「エース脳」
さいとう・かずみ●’77年京都府生まれ。プロ通算79勝23敗、勝率7割7分5厘。右肩の故障に泣かされながらも「負けないピッチング」で沢村賞を2度受賞。太く短く生きたホークス伝説のエース



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