大量処分続発だが…鳥インフル「知られざる巨額補償金」

万単位で処分して大丈夫なのかなと思っていたが、
実は手厚い支援体制が
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大量の鶏が殺処分され、埋められた場所には、臭いに引き寄せられた野鳥が群がっていた(新潟・上越市)
・青森市 あひる1.8万羽(11月28日)
・新潟・関川村 採卵鶏31万羽(29日)
・新潟・上越市 同24万羽(30日)
・北海道・清水町 同28万羽(12月16日)
・宮崎・川南町 肉用鶏12万羽(19日)
 ’16年末、全国で鳥インフルエンザ感染被害が相次ぎ、殺処分・埋却された鳥は100万羽近くにのぼった。
 とくに大量の殺処分となった新潟・関川村、上越市の現場では、原発事故さながらの物々しい光景となった。養鶏場の周辺を厳重に立ち入り禁止にしたうえで、防護服姿の自衛隊員、県庁職員が鶏舎から次々に鳥を搬出した。
「前日までなんともなかったのに、朝見たら何羽もまとまって死んでいたんです。普通の死に方ではなかったので、保健所さんに電話をして(鳥インフルかどうか)判断してもらったという次第です。朝20羽がまとまって死んでいた近辺で、午後にもさらに20羽が死んでいて、これはおかしい、と」(鳥インフルエンザが発生した新潟・関川村の養鶏業者)

損失の全額を国が支払い
 鶏舎のなかで、いったん鳥インフルエンザが発生すると、同じ鶏舎のなかのすべての鶏を殺処分する。
 卵を産む鶏の一羽あたりの価格は1000円程度とされ、10万羽を殺処分すると1億円を超える損害が発生する。農家にとっては死活問題と言える大打撃だが、「鳥インフル倒産」は報告されていない。どんな事情があるのか?
「あまり知られていませんが、鳥インフルエンザの被害があっても、国からの補助金、交付金や融資など『3階建て』の手厚い支援体制になっていて、農家はほとんど損しない仕組みなんです。ありがたい制度ですよ」(養鶏業界関係者)
 農水省の消費・安全局動物衛生課によると、鳥インフルエンザが発生した農家には、国から「患畜処理手当等交付金」として殺処分した鳥の"実費"が支払われる。
「市場価格を踏まえて都道府県で算定し、殺処分した鳥に見合う額を国が全額支払う」(動物衛生課)という。今年度は9億2300万円の予算がつけられており、一羽1000円で計算すると92万羽を補償できる額になる。
 発症した鳥の殺処分、焼却・埋却の費用も、国と都道府県が全額支出する。
 そのほかに、「家畜防疫互助基金支援事業」という制度があり、一般社団法人日本養鶏協会が積立金を管理している。
 これは、毎年一羽あたり4.5円(採卵鶏)を積み立てていた養鶏業者に対して、鳥インフルエンザ発生時に一羽あたり上限860円を援助するもの。実はこれにも、国(農水省所管法人)が支払い額の半額(430円分)を援助している。殺処分された鳥の市場価格に加えて、こうした援助をする理由について、農水省はこう説明する。
「農場経営するためには、雇用している人の労賃とか、施設の賃貸料、負債の利子などの固定費があります。鳥インフルエンザ発生後の、経営再開までには時間がかかりますから、そういう固定費を踏まえて設定しています」(動物衛生課)

0.08%の超低利融資も
 それだけではない。
 被害農家には、利率0.675%の「経営再開資金」融資制度(上限8000万円=法人)、利率0.08%という超低利の農林漁業セーフティネット資金という融資制度もある(経営費の4分の1等を上限)。交付金+互助金+超低利融資の3階建てになっているのだ。
「衛生対策をしっかりやっていたにもかかわらず鳥インフルエンザが発生してしまった農家には、’11年の法改正でしっかり交付金をつけるということになりました。農家が早く(鳥インフル発生を)報告してくれれば、結果として発生件数を減らし、国の出費を少なくすることができるからです」(北海道大学大学院獣医学研究科・迫田義博教授)
 民主党政権当時、「国民の生活が第一」のスローガンで農家の戸別所得補償が実施されたが、同時期に鳥インフルの被害にも手厚い支援が用意された。
「いま、県の家畜保健衛生所さんといろいろ相談しているところです。(経営再開は)いつになるかわかりませんが、できると思います」(前出・関川村の業者)
 農水省では、今期の「鳥インフルエンザ」対策費用の総額を現在、算定中だが、不足が出た場合は財務省に追加の予算措置を依頼するという。
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鶏舎には防護服を着た陸上自衛隊員が入り、作業した(陸上自衛隊第12旅団提供)
PHOTO:時事通信社 白石哲郎
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