連載 斉藤和巳の「エース脳」マウンドから見たドラマの裏側 第33回 マエケンがメジャーで身につけた投球術

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メジャー1年目で16勝は日本人最多タイ。前田は年間通してローテを守り、プレーオフでも力投した

 メジャーリーグ移籍1年目から16勝をマークしたドジャースの前田健太。彼を見ていて感心させられるのは、技術もさることながら、自己分析力が高いことです。

 投げながら相手打者を観察し、常に何かを感じ、その情報を脳で的確に処理して、パフォーマンスにつなげる。簡単そうに見えて、なかなかできないことです。

「効率よく打たせられる球種が必要。小さく動くボールを使っていかないといけない」

 帰国した後に受けたインタビューで、前田はこんな趣旨の発言をしていました。メジャー1年目を踏まえた今季の課題をすでに見つけていたのです。

 日本の打者は前でさばくタイプが多いのに対し、メジャーの打者はボールをギリギリまで引きつけて、身体に近いポイントで打つ。前田のスライダーのように曲がりが大きい変化球は空振りを取れる確率は高いですが、変化し始めるのが早いので、見極められる確率も高い。昨季1年、戦うなかで「変化は小さくても、打者の手元で動いてバットの芯を外すツーシームやカットボールのようなボールがほしい」と痛感したのでしょう。

 ただ、ツーシームやカットボールは曲がりが小さいから、ストライクからストライクの変化になりやすい。ストライクゾーン内での勝負になるので、甘めのゾーンから厳しいゾーンに変化するように投げねばなりません。コントロールミスすると、危険なボールになるリスクがあります。それでも前田は、リスクを取るだけのリターンがあると判断したのだと思います。

 そこには投手心理も働いているはずです。

 メジャーでは6イニング以上を投げて自責点3点以内ならば「クオリティ・スタート」といって、先発の仕事を果たしたと見なされます。ただ、登板間隔が中4〜5日と短いため、メジャーの先発投手は球数制限が厳しい。1イニングでも長く投げるためには、できるだけ少ない球数でアウトを取っていかなくてはならない。ストライクゾーンで小さく曲がる変化球は、見送ればストライクになりますし、ゴロになりやすいので走者がいればゲッツーを取れる可能性もある。一石二鳥のボールなのです。

 僕も現役時代、右肩に不安がありましたし、ピンチの場面に余力を残しておきたかったので、ストライクからストライクになるスライダーやフォークを使って球数を抑えるようにしました。

 基本的には打率の低い打者や、下位を打つ打者に早いカウントで投げていました。確実に3球以上要する三振より、1球、2球で打ち取れたほうが効率的だからです。得点差があったり、走者がいない場面では中軸打者にも恐れずに使っていました。

 結果を残しているのに、ピッチングを変えるのは怖いもの。しかし、リスクをおそれずに挑戦できる前田なら、新たな武器も使いこなせるでしょう。

斉藤和巳の「エース脳」
さいとう・かずみ●’77年京都府生まれ。プロ通算79勝23敗、勝率.775。右肩の故障に泣かされながらも「負けないピッチング」で沢村賞を2度受賞。太く短く生きたホークス伝説のエース
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