連載 斉藤和巳の「エース脳」マウンドから見たドラマの裏側 第34回 マエケンがメジャーで身につけた投球術

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西武はこれまで何度も森の固定を試みたが、負けが込むとスタメン落ち。辻新監督は使い続けられるか!?

 ここ数年、不動の正捕手が少なくなり、各球団とも投手との相性を考えて捕手を併用するケースが増えています。

 侍ジャパンのメンバーを考えた時、扇の要である捕手をすぐに決められない現状は3月のWBCだけでなく、その後の国際大会を見据えても憂慮すべき課題です。

 捕手は一にも二にも経験が重要です。

 育てるためには試合に出し続けなくてはなりません。出たり出なかったりだと、先を見越したリードができない。このコラムでも書きましたが、同一カード3連戦の初戦では2、3戦目を見越した"布石"を打つことがあります。初戦で徹底して打者の懐に速球を投げておいて、次戦でその残像を利用したリードをしたりするわけです。次の試合に投げる投手のタイプまで考えてリードできれば、3連戦を有利に戦えます。

 見落とされがちですが「明日は出られるかどうかわからない」という状況だと、捕手のリードはどうしても守りに入ってしまいます。安全なリードになりがちで、相手に読まれやすくなる。

 では、ファームでマスクをかぶり続ければいいかといえば、そうでもない。投手や相手打者のレベル、自分にかかるプレッシャーがまったく違うからです。やはり、一軍でどれだけ経験を積めるかが大事です。

「投手が捕手を育てる」と言われます。

 これも一軍でのケーススタディの大事さを示す言葉だと思います。僕は捕手を育てたことはありませんが、山崎勝己(かつき)(現オリックス)が一軍に上がってきたころ、バッテリーを組む機会が何度かあり、思ったことを伝えたり、考えを聞かせてもらいました。僕は基本的に捕手のサインに応えるタイプですが、勝負どころで「ここでカーブはないやろ?」など「違う」と思ったときは首を振り、試合後、勝己にサインを出した意図を聞きました。そのうえで、セオリーも状況によっては破らなければならないことを、投手心理や僕なりの経験を交えて説明しました。「捕手は目立ってはいけない」と言われますが、僕はそうは思いません。遠慮しすぎる捕手だと、投げていて不安になる。視野が広く、同じミスを繰り返さず、自分の考えを持っている。この要素が捕手は特に大事だと思います。

 正捕手になる条件として、最後に挙げたいのが打力です。捕手は守備が一番大事ですが、打てないと試合終盤に代打を出されてしまう。試合終盤の重圧のかかる場面で1球1球、リードを積み重ねることができないというデメリットがあるのです。

 近年の名捕手と言われる選手は打てる人が多い。古田敦也さん、城島健司さん、阿部慎之助、谷繁元信さんも勝負強かった。

 そんななか、期待しているのが西武の森友哉です。打力の高さは疑いようがないですし、肩も強い。本人も辻発彦新監督も今季は「捕手一本」を掲げています。リードとキャッチングはまだまだですが、今季1年間は負けが込んでも森に任せるくらいの決断、我慢を辻監督に期待したいですね。

斉藤和巳の「エース脳」
さいとう・かずみ●’77年京都府生まれ。プロ通算79勝23敗、勝率7割7分5厘。右肩の故障に泣かされながらも「負けないピッチング」で沢村賞を2度受賞。太く短く生きたホークス伝説のエース
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