不定期連載 国民の二人に一人がかかる病気 がんにどう向き合えばいいのか 小橋建太( 元プロレスラー)

腎臓がん
「風邪がすべての前兆だった」
罹患数、死亡数ともに増加する、がん。
いつわが身に襲いかかるかもしれないこの病魔と闘った有名人がいた。
彼らのその壮絶な闘病生活とは――。
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こばし・けんた ’90年代後半から活躍。’13年に引退するまで、数々のタイトルを獲得した
 ’90年代を代表する元プロレスラー、小橋建太(49)が突然、腎臓がんを告げられたのは’06年6月のこと。
「もうプロレスができなくなると思ったら、頭が真っ白になった。病院からの帰りのタクシーでも、走馬灯のように頭に浮かぶのはプロレスのことばかりでした」
 宣告された瞬間を、小橋はこう振り返るのだった。
 国立がん研究センターが’15年に発表したデータによると、腎臓がんの罹患数は約3万人とけっして多くないが、女性に比べ男性のほうが2倍以上発症しやすく、初期段階では無症状なことが多いと言われている。なかでも疼痛(とうつう)や血尿などは特徴的な症状として挙げられるが、小橋の場合、ハードな練習で痛みへの耐性がついていた。しかし一点だけ、気になる点があった。風邪である。
「以前から風邪が治ってもすぐにぶり返すという兆候がありました。そんな時、たまたま会社の健康診断を受けたら『腎臓に腫瘍(しゅよう)があります』と言われたんです。風邪は万病の元というけれど本当だね」
 死を覚悟していた小橋は、すでに発表されていた試合に強行出場するつもりでいた。しかし医師の説得で思い止まり、手術を決意。’06年7月、約5時間半に及ぶ腹腔鏡手術で右の腎臓を摘出した。
「膝(ひざ)などの手術を受けた時は病室にダンベルを持ち込んで鍛えていたけど、今回は安静にしていました。とにかく傷口がネジれるみたいに痛くて。入院中は看護師さんたちと話せるからいいけど、退院後は家のソファーに一人で座っていることも多かった。そうすると、不安なことしか思い浮かばず精神的に追い詰められていく。それが一番ツラかったです」
 術後、腎臓の負担を減らすため、低タンパク高脂肪の食事にチェンジ。家では味噌や醬油の量を極力減らした薄味の料理を食べ、たまに外食する時は濃い味の料理を食べることで食事にメリハリをつけているという。また、不純物を濾過(ろか)する腎臓の働きを助けるために、日に2〜3Lの水も飲んでいる。
 そして小橋は’07年12月、実に546日ぶりに武道館で試合を行った。
「この復帰戦では、体重をベストコンディション時の115㎏とコールしてもらいました。そのおかげか、リングに続く花道を通る間も『がんを克服できたんだなぁ』と感傷的な気持ちにならず、闘病前と変わらない"平常心"で試合に臨むことができました。結果はフォール負けでしたが、1年以上もリングに上がっていなかった僕が動けたのは、ファンの声援と、復帰戦を許してくれた先生のおかげです」
 真面目な顔で何度も周囲への感謝を述べる小橋。妻への思いも語った。
「『ありがとう』とよく言っています。気恥ずかしい気持ちはありますが、明日、突如何かが起きてもおかしくない。いまできることをやる。あたりまえのことですが、闘病生活を経て、改めて考え直すようになりました」
 ’13年5月に現役を引退した現在は、小児がん患者の支援も行っている。感謝を忘れず、小さなことからコツコツと。がんを患(わずら)ったからこそ、気付くことができた感情だった。
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得意のチョップを繰り出す小橋(右)。GHCヘビー級王者だった2年間で13度の防衛に成功
PHOTO:結束武郎(1枚目) プロレスリング・ノア(2枚目)
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