連載 斉藤和巳の「エース脳」マウンドから見たドラマの裏側 第36回 フォーム固めにはカーブがいい

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フォーム固めの大切さを痛感した西武・髙橋は秋季キャンプで連日ブルペンへ。この春も徹底的に投げ込む

 2月1日、今年もプロ野球12球団がキャンプインしました。投手にとって、投球フォームを固める大事な期間です。

 ルーキーイヤーに5連勝をマークして月間MVPに輝くなど活躍。飛躍を期待されながら、昨季4勝11敗に終わった西武の髙橋光成(こうな)は「後半戦はフォームがバラバラになった」と悔やんでいたそうです。フォームが不安定なことにより、疲労が蓄積。制球が安定せず、5〜6回もたずにKOされるシーンが続いたというのです。

 フォーム固めの方法は人それぞれですが、捕手を立たせて投げる「立ち投げ」から始めるのが一般的。徐々にボールを低くしていき、最終的に捕手を座らせるのです。

 低めに力のある球を投げるためには身体全体を使って、バランス良く、良いタイミングで投げなければなりません。最初から低めに投げようとすると、小手先で投げてしまいがちになる。立ち投げから始めることで、フォームを意識しながら低めに投げることができるようになるのです。

 興味深かったのは、昨季、日本球界に戻ってきたソフトバンクの和田毅。彼はボールが垂れてしまっても気にせず、低めから投げ始めて、だんだんと高めに上げていく。日本以上に低めを大事にするメジャーでは、そうしてフォーム固めするのが普通だそうで、「高めにはいつでも放れる。こちらのほうがいまは楽です」と言っていました。

 僕のフォーム固めも少々独特でした。立ち投げから始めるのは同じですが、キャンプ中は基本的にストレートとカーブしか投げませんでした。他の持ち球であるスライダーやフォークは真っ直ぐと同じ感覚で投げていたので、フォームさえ固まっていれば、調整にさほど時間はかからない。

 ところが、カーブはそうはいきません。

 ボールを抜くため、手首を90度近く外側に回転させて投げねばならず、他の球種のように小手先でごまかしがきかない。身体のバランス、腕の振り、ヒジの使い方などに狂いが生じると、曲がりが小さくなったり、ひっかかったり、抜けたりする。フォームのズレが、如実にボールに現れるのです。ロッテの涌井秀章は試合開始後、早い段階でカーブを投げてフォームをチェックするそうですが、僕にとってもフォームの良し悪しを判断するバロメーターでした。気になるところがあれば、カーブでキャッチボールをしたりしていました。

 僕はダッシュをしている時ですら、投球フォームのことを考えていました。軸足である右足一本でマウンドに立って、左足を踏み込む動きをイメージして、半身でスタートするのです。チームメイトはタイムに一喜一憂していましたが、僕はどうでもよかった。左足を踏み込んでからの腰の切り返し、その直後の右足による地面の押し込みに集中していたのです。

 野球選手は陸上選手でも、ボディビルダーでもないわけですから、投手ならより自分のフォーム固めに結びつく、質の高い取り組みを重ねなくてはなりません。

斉藤和巳の「エース脳」
さいとう・かずみ●’77年京都府生まれ。プロ通算79勝23敗、勝率7割7分5厘。右肩の故障に泣かされながらも「負けないピッチング」で沢村賞を2度受賞。太く短く生きたホークス伝説のエース
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