不定期連載 国民の二人に一人がかかる病気 がんにどう向き合えばいいのか 角盈男(元プロ野球選手)

前立腺がん
「告知された瞬間はどこか他人事でした」
罹患数、死亡数ともに増加する、がん。
いつわが身に襲いかかるかもしれないこの病魔と闘った有名人がいた。
彼らのその壮絶な闘病生活とは――。
不定期連載 国民の二人に一人がかかる病気 がんにどう向き合えばいいのか 角盈男(元プロ野球選手) 画像1
すみ・みつお ’77年、読売巨人軍に入団。翌年に新人賞を獲得する。引退後はテレビタレントとして活動する傍ら、ヤクルト・巨人の投手コーチも務めた
 ’80年代、巨人のリリーフエースとして数々の名勝負を繰り広げた角盈男(すみみつお)(60)。3年前、知人に誘われて受けた健康診断で、PSA(前立腺特異抗原。前立腺の上皮細胞から分泌されるたんぱく質で、この値が高いと前立腺がんや前立腺肥大症などの疾患の疑いがある)の値に異常が見つかった。
「胃がんを患(わずら)った王(貞治)さんは大好きなラーメンが食べられなくなったから異変に気づいたらしいけど、自分には頻尿なども含め、自覚症状はまったくなかった。当時57歳で、尿のキレは多少悪くなっていたけど、常識的なものだと思っていたし。検査では、肛門を触診されたり針を入れて細胞を採られたりしたこともあったな……」
 当時を思い出したように、少し顔を歪(ゆが)める角。一方で、前立腺がんを告知された瞬間は「『ふーん』って感じだった」と淡々とした口調で語った。
「自覚症状がなかったから、どこか他人事でね(苦笑)。それに職業柄、何か問題が起こった場合は、すぐに次の手を考える。リリーフっていうのは、だいたいチームがピンチの時に名前を呼ばれるでしょう? その時にやるべきことはピンチになった原因の追及ではなく、最善の対策を考えること。それは病気も同じで、病院によって推奨する攻め方(治療法)が違う。がんと言われて悩むより、現実を見据えて自分に合った対処をしていくことが大切なんです」
 そこで角はまず、ホルモン療法を開始した。
「男性ホルモンを抑えないといけないと言われ、月に一回の注射と、一日一回の内服薬を3ヵ月間続けていました。そのおかげで、女子への興味が見事なまでになくなってね。週刊誌の袋とじも開けなかったよ(笑)。そんな時に『トモセラピー』という治療法を知った。これは最新の放射線治療法の一種で、ホルモン療法が必要ないうえに治療中でも酒を飲んでいいと言われたから、俺にピッタリじゃないかと」
 トモセラピーについて、角の主治医である『クリニックC4』青木幸昌院長が解説する。
「大きな特徴として、照射時間や量を調整できるうえに、がん細胞のみに集中照射できるので、周りの正常組織を傷つける恐れが低いことが挙げられます。がんに厳しく身体に優しい治療法です。また飲酒については、止めたからといってすでに発症しているがん細胞が治るわけではありませんし、角さんのQOL(生活の質)を最大限考慮したうえでのことです」
 約1ヵ月間この治療を行ったが、CTスキャンのように機械の中に寝ているだけなので、治療している感覚は一切なかったという角。ただし、「初回は尿の流れをみるために、オムツを穿(は)いて機械の中でおしっこをしないといけない。その恥ずかしさといったら……」と苦い思い出を語ってくれた。
「ノーアウト満塁をピンチと思うか、ヒーローになれるチャンスと思うか。何事も考え方次第で、どうにでも変わるんですよ」
 どんな逆境にも屈しない、名リリーフの魂を見た。
PHOTO:結束武郎
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