平壌で日本料理店を開く藤本健二氏が見た「金正恩の素顔」

「正恩大将はもつ煮好き。クサヤのことを『ウンコと同じ臭い』と激怒しました」
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朝鮮人民軍の演習を視察する正恩氏。煮込み豆腐やウナギのかば焼きを好んで食べる
「オレが殺された? ハハハ! 日本ではそう報じられているのか。この通り、元気でやっていますよ」
 北朝鮮の料理人こと藤本健二氏(69)が、自身が経営する平壌(ピョンヤン)市内の店で笑う。
 藤本氏が訪朝したのは昨年8月。以来6ヵ月以上、音信不通になり、日本では「収容所に送られ死亡したのでは」と憶測が流れた。だが藤本氏は、高級デパートが立ち並ぶ一等地に本名の「たかはし」という名の日本料理店を開いていた。2月10日に同店を訪れた男性が話す。
「1月に開店したという噂を聞き、北朝鮮のガイドに『連れていってくれ』と頼んだんです。藤本さんは私を見ると、日本人が珍しかったのか『おお!』と両手で握手し迎えてくれました。店内は10畳ほど。カウンターとテーブル席が2卓ありました。コース料理(ガイドなど4人で約1万7000円)を注文して出てきたのは、つぶ貝の酢の物、茶碗蒸し、刺身盛り合わせ、握り寿司、味噌汁、フルーツポンチなどです。どれも素材が新鮮で、とくに牡丹エビの刺身が美味かったですね。『酒はどうだ?』と、日本酒も徳利2本出してくれた。藤本さんは『シャリはあきたこまち、醬油はキッコーマン、酢はミツカンとすべて日本製だよ。電話一本で手に入る』と笑っていました」
 藤本氏と交流のあった「コリア・レポート」編集長、辺真一(ピョンジンイル)氏が語る。
「藤本さんは金正恩(キムジョンウン)(朝鮮労働党委員長)氏が幼いころから食事を供し、気に入られています。北朝鮮が資金を用意し、本人が『夢だ』と語る日本料理店を開店させたのでしょう。これまで日本へのメッセンジャーとして働いたご褒美ですよ」
 藤本氏が初めて正恩氏と対面したのは’90年1月。正恩氏が7歳の時だ。以来10年以上、金ファミリーに食事を作り続けた藤本氏は、’10年10月の本誌の取材でこう話している。
「正恩大将は将軍(父親の故・金正日(キムジョンイル)総書記)に似て、寿司が大好物でした。大トロやカンパチ、トビコをサビ抜きで食べていましたね。父子とも辛いモノが苦手なんです。もつ煮やソース焼きそばなど庶民的な料理もお気に入りで、よく『フジモト、おやつに作ってよ』とせがまれました。ただ珍味好きな父子に、クサヤを出した時は肝を冷やした。将軍は『まずい』と不機嫌になり、正恩大将は『ウンコと同じ臭いじゃないか!』と激怒し口もつけようとしなかったんです」
 昨年4月、正恩氏は再会した"日本の唯一の友人"藤本氏に語りかけた。
「早く北朝鮮に来て、平壌に住む妻子と暮らしたらよいではないか」
 前出の辺氏が正恩氏の意図を計る。
「ミサイル発射実験や金正男氏暗殺で批判を浴びる北朝鮮は、国際的に孤立を深めています。海外の情報を得る手段が少ない。藤本氏の店に国交のない外国の旅行者や要人を招き、パイプを作ろうとしているのでしょう。藤本氏を永住させ、広告塔として利用しているんです」
 北朝鮮では、「たかはし」での夕食を含む外国人向けツアーが計画されている。
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日本人男性客と藤本氏。左奥には2人を監視するような人影も見える
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藤本氏の手書きメニュー。天ぷらなどが供される最も高いデラックスコースで 150ドル(約1万7000円)
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店内には「久保田」などの日本酒が並ぶ。藤本氏の他に北朝鮮人男性の板前一人、ウエイトレスが一人いる
PHOTO:KCNA/新華社/アフロ(金委員長)
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