連載 斉藤和巳の「エース脳」マウンドから見たドラマの裏側 第39回 ソフトバンク松坂大輔が克服した「不安」

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2月14日、シート打撃に登板した松坂は「キャンプイン後、最悪の状態」ながら去年とは別人のピッチング

 ソフトバンクの松坂大輔が体重を約10㎏落としてキャンプイン。ハイペース調整で話題となっています。

 松坂によれば「胸と肩につき過ぎた筋肉を落とす」ことが減量の狙いのひとつだそうです。筋肉が邪魔になって動きが制限され、肩に負担がかかっているという判断をしたのでしょう。ピッチングには柔軟性が不可欠ですし、肩の可動域も重要。筋肉は機能的に発達させなければ逆効果になる。メジャーに挑戦するにあたり、パワー負けしたくないとか、連投に耐えられるようにしようなどと、彼なりにいろいろ考えて身体を大きくしたものの、うまくいかなかったということだと思います。

 今回、筋肉をそぎ落としたことで不安なく投げられているのだから、試みはうまくいっていると言っていい。2月3日にB組の打撃投手を志願した時の映像を見て「オッ」と思いました。去年とはまったく違うフォームで投げていた。下半身が使えるようになったので、そのぶん、打者に向かっていくことができていたのです。

 僕がホークスキャンプを訪れた2月11日は、疲れもあって少しフォームのバランスを崩していましたが、それでも180球以上、投げていました。2月14日のシート打撃では、疲労で身体が動かなかったそうで、7人に投げて三振ゼロ。2本の二塁打を浴びましたが、カットボールやスライダー、角度のある真(ま)っ直(す)ぐでストライクを取れていた。状態が悪いながらも、良い形で投げられるようになったからでしょう。松坂は僕にこう言いました。

「肩のことが気にならなくなり、下半身に意識を持っていけるようになったので、去年と全然違います。楽に感じています」

 肩に心配がないというだけで、去年からは大きな前進です。下半身を意識するのは難しいもの。ましてや痛みや違和感を抱えた状態だと、どれだけ頭で意識していても身体が無意識にブレーキをかけたり、庇(かば)う動きをしてしまいます。

 去年までの松坂は、立ち投げに近いフォームでした。投げることに必死で、下半身にまで意識が及んでいなかったんでしょう。ここからさらに1段、2段と上がっていく必要がありますが、今年は打者と勝負できるところまで行けると見ています。

 2月16日からの第4クールは疲労回復を優先させて、ペースを落としました。年齢的にも、今後は量より質を問うようにしていったほうがいいでしょう。

 いまの松坂の状態と層の厚いソフトバンクの先発投手陣を考えれば、開幕ローテーションに割って入っていくのは厳しいかもしれません。それでも、打者と相対せば、彼がもともと持っている本能が働いて、ピッチングの質がグッと上がることは十分に考えられます。この後、実戦でどんな結果、内容、姿を見せてくれるのか。そこに注目しています。

斉藤和巳の「エース脳」
さいとう・かずみ●’77年京都府生まれ。プロ通算79勝23敗、勝率.775。右肩の故障に泣かされながらも「負けないピッチング」で沢村賞を2度受賞。太く短く生きたホークス伝説のエース
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