これが「早実」伝説だ!

「センバツ」清宮幸太郎で注目
大物卒業生たちの武勇伝を公開する
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’77年に卒業した商業科B組の写真。右前列左から3人目は小室哲哉だ。1901(明治34)年に創立。’01年4月に東京都新宿区から国分寺市に移転。翌年4月から商業科を募集停止し共学となる。’70年代までは普通科でも早大への進学率は5~6割だったが、現在では卒業生の9割以上が進学する
「清宮を始め早実の選手は、ノビノビとプレーしていますね。監督やコーチも、うるさいことを言わず自由にさせている。他の学校なら昔は体罰、現在は管理主義で生徒を型にハメようとします。でも早実はどんな捕り方をしようが、グラブの使い方は自由。野球だけでなく、音楽でも美術でも生徒が好きなことなら何でもやらせる。そんな校風が、卒業生以外にもファンの多い理由でしょう」
 スポーツライターの安倍昌彦氏が話す。
 3月19日に開幕するセンバツ高校野球の最注目校は、清宮幸太郎(17)を擁する早稲田実業だ。野球だけでなく、早実OBが活躍する分野は政財界、芸能界と多岐にわたる(下の表参照)。大物卒業生たちのルーツとなった、学生時代を紹介しよう。
軽自動車で田園調布ナンパ
「高校時代は妄想ばかりしていました。実家は築地(中央区)で、都電で早実に通っていたんですよ。車内には学習院や白百合の女子高生がいてね。遠くから『女の子ってどんな匂いがするんだろう』って、指をくわえて想像していました」
 こう語るのは演出家のテリー伊藤氏(67)だ。現在は共学でJR国分寺駅近くにある早実だが、テリー氏が通っていたころは新宿区鶴巻町にある男子校だった。
「考えるのは、女の子にどうやったらモテるんだろうということばかり。当時は16歳で軽自動車の免許が取れましたから(’68年に廃止)、おカネのあるヤツは高校1年生で自動車を持っていました。同級生との会話も女子のことがほとんど。『可愛い子が大勢いる街はどこだろう』。『そりゃ、田園調布や成城あたりじゃねぇか』。そんなノリで、軽自動車に4〜5人乗り込んで田園調布にナンパしに行くんです。でも実際には萎縮して声をかけられません。車内から、キレイな女子高生たちを眺めているだけ。こうした経験が、後に『ねるとん紅鯨団』などのテレビ番組を作ったキッカケになったんです」
 そんなテリー氏たちを見かねた担任の教師が、苦言を呈した。
「オマエたち。磁石論って知っているか。自分の内面を磨けば磁石ができる。磁石ができれば女の子が寄ってくる。外面ばかりに気を遣うのではなく、いま若い時期にやるべきことがあるだろう」
 テリー氏は「なるほどなぁ」と納得。
「言いたかったのは、『女の子にうつつを抜かさず勉強しろ』ということだったと思います。直接的に説教しないのが良かったです。結局、早大に進学できず日大経済学部に進学しましたが、早実の先生に怒鳴られたり手を上げられたことはありません。犯罪に手を染めないかぎり、ほうっておいてくれました」
 テリー氏の番組企画の多くは、好きなことをやらせてもらった早実での体験が影響しているのだろう。
苦境を救った監督の言葉
 1年生からエースとして活躍し、早実を春夏5季連続甲子園に導いた荒木大輔(52)。端整な顔立ちから、全国に"大ちゃんフィーバー"を起こした。
「電車に乗ると、いろいろな人から『握手してくれ』『サインください』と話しかけられ大変でした。すると騒ぎを知った同級生たちが、毎朝ボクと同じ電車に乗るようになったんです。周りを囲んで、不審な人が近づかないようにしてね。『オレたちが守ってやるぞ』などと、恩着せがましいことは言わない。だから最初は、友人たちが何をやっているのかわかりませんでした。ある時、寝坊して20分ほど遅れて家を出たことがあります。すると友人たちは電車に乗らず、駅でボクを待っていた。それで、ようやくアイツらの優しさに気づいたんです」
 大人の気配りをしたのは、生徒だけではない。
「野球部の和田明監督は、鉄拳制裁が当たり前な当時でも手を上げるようなことのない温厚な方でした。大事な話は、みんなの前ではしません。『肩を揉んでくれ』と言って、二人だけの時間を作るんです。フィーバーの真っ最中にも、監督に呼ばれこう言われました。『騒ぎになっているからといって、オマエが気おくれすることはない。どんどん仲間の輪に入っていきなさい』と。騒動になってチームに迷惑をかけ申し訳ないという気持ちがあったので、監督の言葉には本当に助けられました」
 早実卒業後の’83年にドラフト1位でヤクルトに入団した荒木だが、なかなか結果を出せない。「客寄せパンダ」 「高校までの選手。プロでの能力はゼロ」――。厳しい見出しが、スポーツ紙に躍る。
「ヒジを壊し腰を痛め、リハビリばかりの毎日でした。先が見えずツラかったですね。そんな時、和田監督から『運転手をやってくれ』と呼び出されたんです。車内では、饒舌(じょうぜつ)に話すワケではありません。『焦るなよ。絶対にうまくいくから』と声をかけてもらいました。監督の気遣いに涙が出ましたね。あの言葉があったから、苦しい日々を耐えられたんです」
 荒木は’92年に4年半ぶりの勝ち星をあげ、セ・リーグ特別賞を受賞した。
2度の停学で早大進学断念
「高校生の時はヤンチャでした。同じJR高田馬場駅で乗り換えていた、朝鮮高校(東京朝鮮中高級学校)の生徒たちとモメたりしてね。理由なんてありません。当時は目が合っただけでケンカになっていたんです。腕っぷしには自信があって、負けた記憶はないですね。よくパーティも主催していました。ディスコを貸し切って、100人くらい集めるんです。女の子はタダで、男は一人3000円くらいだったかな。他の学校とのネットワークは強くなりましたが、早実からは白い目で見られました……。2度停学を受けて、早大に進学できず明治大学に進むことになったんです」
 衆議院議員で、内閣官房副長官の萩生田光一(はぎうだこういち)氏(53)が振り返る。成績は中位を保っていた萩生田氏だが、この停学が響き早大への進学は危うい状況だった。
「ラグビー部の顧問からは入部を勧められました。『ラグビーをやればスポーツ推薦で入れるかも』と言われてね。ボクは100mを11秒2で走るくらい、脚が速かったんです。でも当時の早大は商学部入試問題漏洩事件(’80年)の影響で、誤解を招くような推薦はやらない方針だった。結局一般受験をして不合格となり、一浪してライバル明治に入学しました。高校時代は失敗続きでしたが、おかげで精神的に成長できたと思います」
 萩生田氏は「ボクは雑草政治家。原点は早実での挫折にあります」と笑う。
猛練習で授業は常に爆睡
 早実のジャージを着て取材場所に現れたのは、文化放送のアナウンサー斉藤一美氏(48)だ。入学のキッカケは、幼少期からの趣味だったという。
「子どものころからプロレスが好きでね。中学の先生に『プロレス部がある高校はありませんか』と相談すると、『ない』と一蹴されました。ただ、こうも言われた。『ラグビー部はどうだ。ボールを使う格闘技のようなものだぞ』と。そこで、ラグビーが強い早稲田の系属校を受けたんです。練習はキツかったですね。ポジションはフォワードで当たりが強く、休みなしで練習の日々。身長は170cmそこそこで運動神経も鈍かったため、年中ケガをしていた。練習以外の時間はクタクタで、授業中はほとんど寝ていました」
 レギュラーにはなれなかった斉藤氏だが、思わぬ栄誉にあずかる。
「相撲部が廃部危機だったので、高校3年の東京都大会に助っ人にかり出されたんです。小学生のころから休み時間のたびに相撲をとり、ラグビー部で身体をぶつけ合うことにも慣れていたから自信はありました。すると、あれよあれよと勝ち進んで、準優勝したんです。早大相撲部からも勧誘を受けましたが、続けるならラグビーと断りました」
 ラグビー漬けの毎日で女っ気はなかった。唯一の淡い思い出は、高校2年の時に女子校の十文字高校(豊島区)と合コンし女子生徒とデートまでこぎつけたこと。しかし会話は盛り上がらず、一日に映画を2本見てお別れした。そんな男臭い生活が水に合い、斉藤氏はそのまま早大商学部に進学する――。
 世界記録の868本塁打を放ち国民栄誉賞を受賞した王貞治(76)と並び、校賓(賓客として遇する人物)となっているミュージシャンの小室哲哉(58)が語る。
「早実で覚えさせられた言葉があります。『去華就実(きょかしゅうじつ)』。外見の華やかさを追うのではなく、地味でも役に立つ人間になれという意味です。うわべではなく、中身で勝負できる人になろうという意識は、早実で植え付けられました」
「去華就実のこの校風を〜」と歌われる校歌が、今春も甲子園に響く。
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センバツ出場を決め、主将の清宮を中心に「W」の人文字を作る野球部の選手たち
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高校2年時のテリー氏。商業科では2~3割しか早大に進学できなかったという
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高校1年時からエースとして活躍した王貞治。甲子園ではノーヒットノーラン
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荒木は高校1年夏の甲子園で、横浜高に敗れて優勝を逃す
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早大社会科学部に進学した小室。在学中にプロミュージシャンとしてデビュー
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現在フジテレビ常務の大多亮氏も早実OBで、小室と同期の’77年度の卒業だ
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左から2人目が文化放送の斉藤氏。毎日筋肉痛に悩まされる日々だったという
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「※」印の人物の「卒年」は中退した年
PHOTO:早実卒業アルバムより(小室、大多氏) 早実百年記念誌より(王) 本人提供(テリー氏、斉藤氏) 日刊スポーツ/アフロ(荒木)
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