逆転無罪 元アナウンサー煙石博さんが失った「時間と信用」

ズサンな捜査、
デッチアゲ裁判で
作られる冤罪地獄
逆転無罪 元アナウンサー煙石博さんが失った「時間と信用」 画像1
最高裁判所で報道陣を前に会見した煙石氏と夫人。「支援者がいなかったら心が折れていたと思う」(煙石氏)
「この4年間はなんだったんだろうと思います。私は中国放送でアナウンサーとして真面目に働いてきました。38年間、『誠実な仕事』を積み重ねたからこそ定年後も仕事のオファーをいただけた。それが事件で一気に失われてしまって……それが一番辛かったです」
 3月10日、窃盗の罪に問われていた煙石(えんせき)博氏(70)に、最高裁は無罪判決を下した。彼は冒頭のように語り、本誌の取材に応じてくれた。
 ’12年10月11日、煙石氏宅に警察官が突然やってきた。そして、「広島銀行大河支店で人が忘れた封筒を盗って、おカネを抜き取った」として逮捕される。「逮捕状も見せられないまま」煙石氏は広島南警察署に連行、勾留された。
 無罪を主張する煙石氏に対し、警察ははじめから「犯人」と決めつけてかかった。
「防犯カメラの映像には誰が見てもお前がカネを盗っているところが映っとる!!」
 だが、防犯カメラには煙石氏がおカネを盗っている場面など映っていなかった。
「にもかかわらず一審で有罪判決を受けました。『なぜなんだ』と思いました。怒りとともに仕事を失い、一部の親族から避けられていることを肌で感じ、弱気にもなってしまいました」
 一審の3ヵ月後、地元の同級生や後輩、友人知人、中国放送のOBが立ち上がり、有志グループ〝煙石博さんの無罪を勝ちとる会〟が発足。
「チラシ配りや署名活動をしてくださったんです。申し訳なくてね。現役時代にお世話になったうえにこの歳になってなお迷惑をかけるとは。また、家内はもちろん、息子にまで『子不孝』をしてしまったこと。これは親としては一番イケンことですよね」(煙石氏)
 ’14年5月からの公判では、弁護側は映像解析の鑑定人を呼び、防犯カメラに映る煙石氏からは封筒には手が届かないことが陳述された。
 ところが高裁はこの証拠を採用したにもかかわらず、判決に反映させることなく、現金が盗まれたとされる時間に煙石氏が防犯カメラに映っていたという理由だけで、控訴を棄却した。
「裁判長が『異議があれば』と言いかけた言葉を遮るように僕は『大アリです、ムチャクチャだ』と怒りました」(煙石氏)
 しかし、転機もまた、この時の判決にあった。裁判官自らが判決文の中で、映像が粗く、現金を盗ったことは推認だと認めたのだ。
 煙石氏の弁護人である久保豊年弁護士は〝無罪推定〟を論拠に上告。そしてこの、「疑わしきは被告人の利益に」という刑法の原則どおりの判決がこのたび最高裁で下された。
 煙石氏は支援者に対しての感謝の会見で今後の生活について「静かに余生を過ごしたい」と言いつつ、こう続けた。
「いまでも疑いの目で私を見ている人もいるかもしれません。長い人生の中で時間をかけて築いた信用と信頼が一気に失われました。また少しずつ作りあげていくしかない」
PHOTO:蓮尾真司
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