センバツ「本塁打王はオレだ!」

打倒・清宮幸太郎!
3.19開幕
プロ注目の強打者6人

「今年は早実の清宮だけでなく、スケールの大きいスラッガーが豊作です。秋のドラフト会議でも、上位指名される可能性が高いバッターが何人もいるんです」(スポーツライター・矢崎良一氏)
 3月19日に開幕する甲子園センバツ高校野球。プロが注目する"超高校級の強打者"6人を紹介する。
清宮幸太郎(きよみやこうたろう)
(早稲田実業)
センバツ「本塁打王はオレだ!」 画像1
早実初等部4年から東京北砂リトルに所属。中等部1年夏にエースで4番として、チームを世界一に導く。早実では1年夏に高校日本代表の4番に。夢はメジャーの本塁打王。身長184㎝、体重97㎏。右投げ左打ち。東京都出身
屈辱が生んだ"オルティス流打法"
「おぉ〜、打球が速くて見えなかった」
「どこまで飛んでいったんだ……」
 3月8日、東京・西東京市にある早稲田大学のグラウンドに集まった、阪神、日本ハムなど8球団のスカウトが驚きの声をあげた。早稲田実業(東京都)の清宮幸太郎が、早大Bチームとの練習試合で、ライト後方の高さ15mの防球ネットを越える場外本塁打を放ったのだ。
「清宮は昨秋の東京都大会決勝で、日大三のエース櫻井周斗から5三振を喫しています。それがよっぽど悔しかったんでしょう。映像を何度も見直し、悪い点をノートに書き出したんです。その一つが、身体が開いてしまうこと。ムリに引っ張らず、センターから左方向に打球を飛ばすように心がけるようになったんです」(スポーツライター・安倍昌彦氏)
 参考にしたのがレッドソックスなどで活躍した、デービッド・オルティスの打法だ。ギリギリまで我慢し、ボールを引きつけて逆方向にも大きな打球を飛ばす。清宮は、練習中からレフトへの打撃を意識するようになった。
「最近は、強引なバッティングが減りました。父親の克幸さん(ラグビー、ヤマハ発動機監督)と母親の幸世さん(元慶應大学ゴルフ部主将)には、こう言われているそうです。『高校時代にホームランを80本打てたらプロに行ってもいい(現在79本塁打)。それぐらい打てないと通用しない』と」(スポーツ紙記者)
安里樹羅(あさとじゅら)
(高崎健康福祉大高崎)
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小学校3年から沖縄市の美原ドラゴンズでプレー。昨年8月からの公式戦では失策0。幼いころからの巨人ファンだが「指名を受ければどの球団でも行きたい」と語る。身長172㎝、体重70㎏。右投げ左打ち。沖縄県出身
一日4回の食事で本塁打量産
 身長172㎝と小柄ながら、健大高崎(群馬県)の安里樹羅は高校通算22本塁打を放っている。パンチ力の源は、「一日4回の食事です」と安里は言う。
「女子マネジャーが、中間食を作ってくれるんです。中間食とは夕方6時に終わる練習と、夜8時ごろから始まる夜間練習の間にとる食事のこと。牛丼やかつ丼など、どんぶりものが多いですね。夕飯は夜間練習後にとり、白米を1㎏以上食べるようにしています。おかげで体重は、1年間で65㎏から70㎏に増加しました。冬場に一日2000スイング以上振り込んだこともあり、長打を打つ確率はだいぶ上がっています」
 50m6秒1という俊足も魅力。昨年8月に新チームになってから3番に定着し、打率3割6分9厘、10本塁打、11打点と打ちまくっている。
「ボクは沖縄県出身ですが、公式戦では両親が観戦に来てくれます。野球経験者の父親からは、よくメールや電話でアドバイスをもらいますよ。調子が悪い時には、本当に助かります。幼いころから練習につき合ってくれていたので、ステップの仕方やスイング軌道など、おかしいところがあればわかるらしいんです。『甲子園では思いきり自分のスイングをしてこい』と言われました」
 目標は走攻守三拍子そろった、広島の菊池涼介だ。
安田尚憲(やすだひさのり)
(履正社)
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小学校6年時にはタイガースジュニアに所属し、元阪神の赤星憲広氏の指導を受けた。履正社では1年夏からベンチ入り。2年春から4番を任される。身長188㎝、体重92㎏。右投げ左打ち。大阪府出身
アスリート一家が生んだ大砲
 西の注目選手は、高校通算45本塁打を打っている履正社(りせいしゃ)(大阪府)の安田尚憲だ。昨秋の明治神宮大会決勝ではライトスタンド上段に本塁打を放ち、早実を破ってチームを優勝に導いた。ライバル清宮のことは、「中学1年の時から意識していた」と安田は語る。
「テレビ番組の企画で、清宮君が広島の前田健太さん(当時)と対戦していたんです。自分と同い年の中学生なのに、タイミングの取り方がうまいなと感じました。どんな球にも決して突っ込まず、しっかり打ち返していた。技術的にはまだまだ清宮君のほうが上ですが、飛距離では負けたくありません」
 両親がアスリートという家庭環境も、清宮と似ている。父・功さんは元陸上短距離の選手で、昨年、高校駅伝で2年ぶりに全国制覇を果たした大阪薫英女学院の監督。母・多香子さんは、元やり投げの国体選手だった。
「12歳上の兄(亮太氏。現、三菱重工名古屋野球部主将)はPL学園でキャッチャーをしていて、ボクが3歳のころから野球を教えてくれました。左打ちを勧めてくれたのも兄です。『投手は右投げが多い。左打ちのほうが有利だぞ』と。他にも『一塁まで気を抜かず全力疾走しろ』など、基本的な忠告も受けました。父が監督を務める学校の練習も時々見学させてもらいますが、選手たちの集中力がスゴイ。ボクも打席ではムダなことは考えず、自分のバッティングをすることだけを意識しています」
 体重は2年時の80㎏から92㎏に増加し、打球の飛距離は一段と伸びた。甲子園での目標は「もちろん日本一」。将来は憧れの松井秀喜のような左の大砲として、プロでの活躍を目指す。
猪田和希(いのだかずき)
(神戸国際大附属)
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神戸国際大附属では2年夏から4番に座っている。身長181㎝、体重78㎏。右投げ右打ち。兵庫県出身。写真は吊るされたロープに両手、両足を乗せバランス感覚を養うレッドコードというトレーニング
座右の書は『フルタの方程式』
「ずっと外野手だったので、いまはキャッチャーのことを猛勉強中です。古田敦也さんの書かれた『フルタの方程式』は座右の書。投球パターンを決めつけるのではなく、打者に応じて何種類も配球を用意するようにしています」
 神戸国際大附属(兵庫県)の主砲、猪田和希が話す。遠投が110mを超える強肩を買われ、猪田が捕手に転向したのは昨年夏のことだった。
「転向した直後は『打撃がおろそかになっていると言われたくない』と気持ちが空回りし、自分のバッティングを見失っていました。そんな時に参考にしたのが、日本ハムの中田翔さんやDeNAの筒香嘉智さんの動画です。何度も何度も、繰り返し再生しました。見ていると中田さんも、筒香さんも身体がブレない。ボクもロープを使ったトレーニングでバランス感覚を養い(写真上)、身体の軸で回転するように心がけてから、少しずつ結果を残せるようになりました」
 昨年9月からは完全に復調。公式戦12試合で、打率4割7分5厘、4本塁打、14打点と大暴れし、いずれもチームトップの成績をマークしている。
後藤克基(ごとうかつき)
(滋賀学園)
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小学校3年から野球を始め、滋賀学園では1年夏から3番・捕手に定着。同年秋にはチームを近畿大会準優勝に導く。2年春のセンバツでは13打数6安打の活躍。身長172㎝、体重75㎏。右投げ右打ち。兵庫県出身
ベランダから道具を捨てる
 昨秋行われた、智弁和歌山との近畿大会初戦。滋賀学園(滋賀県)の後藤克基の放った打球は、レフトスタンドを超え場外の民家を直撃した。推定飛距離130mの特大本塁打だった。後藤が振り返る。
「打った瞬間『完璧だ』と感じました。ボクは小学校6年まで体重が46㎏しかなく、ホームランなんてほとんど打った記憶がありません。それで中学生になり神戸中央シニアの監督から『食べたいだけ食べて体重を増やせ』と、アドバイスを受けたんです。一回の食事でご飯なら大盛り3〜4杯を食べ、ラーメンの替え玉なら6〜7回注文します。おかげで現在は、体重が80㎏近くまで増えました」
 現在は4番で捕手の後藤だが、一度は野球をやめようと考えたこともある。
「中学の時に腕を骨折したことがあるんです。ケガが治り練習に戻ると、別の選手がキャッチャーをやっていました。ボクは一塁にまわされたんですが、エラーばかり。コーチからは『オマエはキャッチャー以外のポジションだと使えへんな』と叱られました。それが悔しくて悔しくて。実家のベランダから道具一式をほうり投げ、親には『野球、もうやめるわ!』と宣言したんです。でもグラウンドを離れると何もやることがない。抜け殻のような状態が続き、『やっぱり自分には野球しかない』とチームに戻りました」
 以来、後藤は一日も練習を休んでいない。目標とするのは広島の鈴木誠也だ。
「同じ右バッターとして、あれだけフルスイングできるのは尊敬します。思いきり振るだけで、相手バッテリーに恐怖心を植え付けられますから」
 甲子園で"神ってる"活躍を誓う。
金成麗生(かなりれお)
(日大三)
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中学時代は相模ボーイズに所属し、3年春に全国大会出場。父親はアメリカンフットボールの元選手。足のサイズは32㎝。身長193㎝、体重101㎏。左投げ左打ち。神奈川県出身。写真は相撲部での稽古の様子
下半身強化に毎日四股100回
「センバツの目標は早実を倒すこと。清宮君より目立ちたいです」
 こう公言する選手がいる。日大三(東京都)の4番、金成麗生だ。193㎝の長身で米国人の父親を持つイケメンのため、ついたあだ名は「三高のデカプリオ」。東京都大会決勝で早実に逆転負けした悔しさを原動力にしている金成だが、ベンチ入りしたのは昨秋からだ。
「腰のケガも影響していましたが、気持ちの問題が大きかった。凡退することを恐れ、積極的に振りにいこうとしていなかったんです。小倉全由(おぐらまさよし)監督からは、こうアドバイスされました。『結果を恐れるな。次の試合で使うぞ。3球思いきって振ってこい』と」(スポーツ紙記者)
 この言葉で吹っ切れた金成は、都大会準決勝の都立日野戦に先発出場すると、いきなり二塁打と3ランの活躍。リンゴを握り潰せる78㎏の握力で、以降19本の本塁打を量産した。年明けからは、毎日100回の四股(しこ)で下半身も強化している。
「小倉監督が、股関節の硬い金成に日大相撲部へ一日入門するよう勧めたんです。腰割りやすり足など1時間半ほどの稽古で、下半身を柔軟に使うことの大切さを学んだようです。相撲部員に刺激を受け、食事も一回に白米をどんぶり5杯は食べるようになり、体重は101㎏まで増えました。打撃練習でも飛距離110〜120mの打球を連発していますよ」(前出・記者)
 背筋力は、巨人入団当時の松井秀喜を上回る300㎏。センバツでは宿敵・早実とは決勝まで当たらないが、金成は「必ず都大会の借りを返す」と誓う。
PHOTO:高見博樹 形山昌由 加藤 慶
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